心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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PVループ(5)

PVループでは、心筋の拡張性の違いによって同じ左室拡張末期容積でも、拡張末期圧が異なることもわかります。
特に拡張機能がことさら悪い拘束型心筋症ではこれが顕著になります。

正常な拡張特性と高度に障害された拘束型心筋症の拡張機能曲線をイメージするとしたら下のようになります。

これで、同じ拡張末期容積でも、大きく圧が違うことがイメージできます。

心不全のうっ血による症状は、拡張末期圧できまりますので、少しの容積変化で圧が上がりやすいとうっ血の症状が出やすくなります。

 


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Afterload mismatch(後負荷不適合)もイメージしやすくなります。

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拡張機能が悪い心臓に対して、後負荷が急激に上昇すると、カップリングポイントは上の図のように動きます。すると収縮末期容積が大きくなります。

一回心拍出量が変化なければ、心拍出量が維持されたままループは右へ移動します。

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すると大きく拡張末期圧が上がっていることがわかります。

 

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さらに後負荷が増大したとすると、本来なら1回拍出量を維持するために、ループは心拍出量を維持しながら右に移動しますが、あまりにも拡張末期圧が高くなると、それに対して血液を押し込む心房圧を作れなくなります。

心房圧があげれなくなると、本来確保される1回心拍出量よりも少ない心拍出量しか維持できなくなります。

上の図では、実線の分だけ心拍出量を維持したいにもかかわらず、点線分の心拍出量に減少してしまいます。

この現象をAfterload mismatchといいます。

 

時折、血圧が上昇して、Afterload mismatchで肺うっ血が起こったという方がいますが、これは間違いです。後負荷が上がって、拡張末期圧が上がって、肺うっ血が起こるのは、mismatchではなく、不全心にとっては、普通のことだといえます。

血圧が上がっているときに、1回心拍出量が減少する事象をとらえたら、それがAfterload mismatchです。

 

しかし、実際の臨床ではこのような時には、うっ血や肺水腫でかなり息苦しかったりして、結構心拍数が上がっていますので、1回心拍出量が下がっているからといって、afterload mismatchかどうかはわかりません。

そのため、実臨床では、血圧(≒後負荷)が上がっていて、低潅流所見が出現したときに、afterload mismatchであるということが一般的だと思います。