心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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急性心不全の治療(10):酸素投与方法のいろいろ

心不全の時の呼吸管理の方法をまとめます。

酸素は多少なりとも投与するとして、次に大きく陽圧換気がないものと、あるものにわけることができます。
 
まずは、一般的によく使われるカヌラ、マスクです。
酸素の投与量は、1分間に酸素の供給を何リットル行うかという単位で決められていて、X L/minという単位であらわされます。以下酸素の流量単位をLとします。
 
カヌラは低流量で2-3L程度で使われますし、マスクに関しては4-5L以上の酸素流量の時に適しています。
カヌラとマスクを流量で分ける理由としては、カヌラの高流量では乾燥で鼻粘膜の出血などがあったり、低流量で酸素マスクにするときっちりとマスクが当たっていると換気によって、逆にマスク内の酸素濃度が一定にならなかったり、マスク内の空気が滞留してCO2が高濃度になったりするリスクの懸念があるようです。
 
さて、若年者の酸素投与は、3 or 4Lでカヌラとマスクを切り替えれば、特に問題はないと思いますが、高齢者の場合にはいろいろと問題が起こると思います。
例えば、ほぼ寝たきりの人で、口呼吸が中心で、鼻カヌラでは全然意味がない人には、鼻カヌラを皮膚にやさしいテープで固定して、口にあてて投与したり、マスクがどうしても嫌で、鼻カヌラじゃないと絶対に嫌とかいう人もいますので、こういった人に投与する時には高流量カヌラの場合には、かならず加湿のための、あのブクブクというやつをつけましょう。多少は、ましになるはずです。
 
さて、これらは、一応カヌラ何Lで、FiO2 何%相当とかありますが、特に覚える必要はないと思います。結局は、SpO2が目標に達するまで酸素流量を上げるしかないので、マスク10 or 15Lを上限として、どんどんとあげることになります。
 
はっきりとした基準はありませんが、酸素マスク 8Lあたりでも、目標とする酸素化を得られないときには、2つの方法が考えられます。
(もちろん、無気肺などの一過性の低酸素血症の原因を除外したうえでですが)
ひとつは、もっと高濃度の酸素を投与する。もうひとつは、陽圧換気を行う。という選択肢があります。
高濃度の酸素を投与するのに、ひとつはリザーバー付き酸素マスクというのがあり、これを使えばほぼマスク内の酸素が100%に近い(90%程度)高濃度酸素とすることができます。
 
酸素投与の弱点は流量が少ないと、酸素を送っても、患者さんが吸うときに、呼吸の状態によっては、酸素濃度が不安定になることです。
例えば、2L程度の酸素投与では、ゆっくりと呼吸してい時(1分間に12回、1回400mlの換気)では、空気を1分間に4.8L吸っていることになるので、2Lの酸素でもそれなりに有効です。
しかし、早い呼吸(1分間に20回、1回400ml)であれば、8Lを吸っていることになり、酸素投与の効果は落ちます。
 
そのため、この酸素と空気を事前にブレンドして、十分な流量で送ると安定した酸素濃度の空気(正確には空気ではありませんが)を送れので、事前に酸素と空気をブレンドして、酸素濃度をある一定の値として送るような投与方法が、ベンチュリ―マスクといわれるものです。
安定した酸素濃度の空気を送れるという以外に、特に酸素マスクなどよりも有利な点はありません。
 
 
ただし、以前はこのようなものをよく使用していましたが、現在では、こういった酸素濃度にこだわるよりも少しでも陽圧をかけたほうがいいだろうという考えになってきていると思います。
その産物が、ベンチュリ―マスクの進化系であるnasal high flowだと、勝手に思っています。