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急性心不全の治療(9):呼吸管理の始め方、CO2は静脈血でもいいと思う

 
 
急性心不全の呼吸管理に関しては、酸素投与は必要なことが多いと思います。
その中でも心不全の呼吸管理では、陽圧管理が必要かどうかということが重要になると思います。
 
非侵襲的な陽圧管理(noninvasive positive airway pressure ventilation, NiPPV)は心不全の非代償状態の患者においては不必要に血圧を低下させたりすることはありませんので、安全に使用できます。
これは、今までのデータでもそうですし、ある程度重症といわれる心不全患者を診てきましたが、非侵襲的な陽圧換気を行うことで血圧が下がって、陽圧換気を中止したり、それに対して治療を行ったことがないという経験に基づきます。(データと経験が一致すると一層安心できます)
特に、急性期の心不全に対するNiPPVは悪いことは何もありませんので、迷ったら行う。行ってみて、不要そうなら早めにやめてみるということでいいと思います。
 
また、後述しますが、慢性期では、重症な閉塞性無呼吸症候群以外にNiPPV(CPAP)は行ってはいけません。臨床試験でもそういう結果が出ていますし、理屈的にもいいはずはありません。やってはいけません。
 
 
呼吸管理をするうえで非常に重要になるのが、血液中の二酸化炭素(CO2)濃度だと思います。CO2の貯留さえなければ、後はSpO2(経皮的に測定できる動脈血酸素飽和度, 皮ではなく爪ですが)と呼吸回数で、呼吸管理は行っていけます。
血液のCO2の測定は、呼気のCO2濃度を測定できるものもあり、気管挿管での人工呼吸管理では使われていると思いますが、非侵襲的な状況では、測定できるものはありますが、(2019年現在)一般的ではないため、現時点では動脈血を採取しているというのが一般的かと思います。ただ、ひとまずのCO2の確認は、静脈血でいいと思います。理屈的に、動脈血のCO2よりも静脈血のCO2のほうが高いはずですので、静脈血で高くなければ、動脈血も高くないはずです。
 
動脈血を採取するタイミングがあったり、それなりに重症で動脈血が必要と判断されればもちろん動脈血を確認することは重要だと思いますが、まぁ、それほどでもないというときには、心不全入院の時には通常の静脈血の血液検査は必ずすると思いますので、静脈血でガス成分の検査を行って、それで、<45torr以下であれば、正常と判断できると思います。(静脈血で<50torrであれば、まぁ大丈夫ですが)
COPDなどが併存していなければ、大抵は心不全による呼吸不全のための過換気でCO2はとんでいて低めのことが多いです。
ただ、もちろん心不全だけでも、末梢気道浮腫(左心不全による細気管支中心の浮腫)により肺胞内の換気が不十分になってCO2が貯留していることもありますので、CO2をチェックしないよりは、静脈血でもチェックしておいたほうがいいと思います。
 
非侵襲的陽圧換気をするかどうかについては、ガイドラインなどにもありますが、3点に絞れるかと思います。
CO2の貯留がない。
呼吸数が少なくとも20回以下で、酸素投与と安静で、10-15回程度で努力性の呼吸ではなくなる。
陽圧換気を行わなくても十分に酸素化ができている。
ということであれば、陽圧換気を使わなくてもいいと思います。(もちろん使ってもいいです)
 
逆に、行ってはいけない状態は、正直あまりないと思います。
不穏や意識障害、アシドーシスの高度な時など、いくつか条件は決められています。確かにこれらの状態では、気管挿管などをして、しっかりと治療を行うことが必要な状態が多いのは確かです。そのために、非侵襲的な陽圧換気を行うとしても、かならず常に気管挿管が必要になるかもしれないという前提で、しっかりと状態を監視できる環境であれば、別に初めは非侵襲的な換気を試みるのでもいいと思います。
このような状態の人では、まず用手的に換気を行っていることが多いと思います。そのような状態で、しっかりと酸素化を確保したうえで、鎮痛や軽い鎮静などを試みながら、呼吸の状態をしっかりと監視しつつ、非侵襲的な呼吸管理を始めてみるというのは、決して悪い選択ではないと思います。繰り返しますが、常に気管挿管ができる準備は必要ですので、酸素化が維持できないとなったらすぐに気管挿管に移ってください。
もちろん、もうショック状態で、代謝性のアシドーシスでということであれば、気管挿管の上、がっちりと呼吸と循環管理をしていくほうがいいと思います。
 
最重症であれば、もう何も考えずにどんどん侵襲的な検査・治療を行っていけるのである意味迷わないのですが、重症の中で、どこまで必要か迷うようなグレーゾーンのようなものは絶対にあります。個人的には、迷ったときには重症度を一段上げて対応するというのが安全だとは思います。
また、常に一度下した判断に固執せず、常にスムーズに違うレベルの治療に移行できるように、デバイス的な面でも、スタッフの意識的な面でも準備しておくことが重要かと思います。