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急性心不全の治療(11):陽圧換気療法のいろいろ

陽圧換気には、段階的にnasal high flow(NHF)、noninvasive positive airway pressue(nPAP) or nonivaseve positive airway pressure ventilation(NiPPV)、 invasive positive airway pressure(iPAP)があります。
 
nasal high  flowは、特殊な回路を用いて、鼻からかなりの高流量(30-60L/min)のガス(酸素+空気)を投与します。しっかりとした加湿器もありますので、乾燥による鼻粘膜の障害などもありません。また、ベンチュリ型のブレンダーを使用するので、100%の酸素投与も可能です。高流量のガスを流すので、肺胞レベルで少し陽圧がかかります。だいたい、2-3mmHgだとされており、臨床的な感覚でもそのくらいだろうと思われます。
この治療のいいところは、準備が簡単です。やろうと思えば、すぐにできます。また、少しの陽圧がかかり、高濃度の酸素投与も可能です。
ただ、鼻からかなりの高流量のガスを流すので、多くはないですが、強い不快感を訴えて、継続できない人はいます。もしかしたら、鼻中隔などに何らかの異常があるのかも制れませんが、わかりません。
また、結構音がうるさいです。そのために、大部屋などでは使用できないと思います。結構うるさいので、それだけで他の人が不穏になってしまうかもしれません。あと、コスト的には、保険が人工呼吸管理加算がつかないと、結構な出費になります(この保険適応は流動的なので確認してください)。
個人的には、心不全の急性期の陽圧は、肺水腫を起こしていなければ、2-4mmhg程度で十分と思っているので、この程度の陽圧がちょうどいいと思っています。
 
さて、続いては、非侵襲的陽圧換気療法(NiPPV)です。バイパップといわれることもありますが、それはたぶん一番初めに簡単に使用できるようになったのが、BiPAP(biphasic positive airway pressure)だからだと思います。biは、biphaseとbilevelの二つのどちらも指すことがあります。
この治療は、心不全の急性期と終末期に特に有効な治療となります。
簡易的なポータブルの機械(本来は在宅用の呼吸器)と、本格的な機械(V○○など)により、気管挿管などの管を使わずに、何らかのマスク(鼻だけ、鼻口、顔全部、時には鼻に突っ込むタイプなど)などを用いて、マスク内を陽圧にして換気を行う治療です。
 
在宅用の機械は、簡単に使用できるのと、バッテリーが内蔵されているものに関しては、移動時などにもそのまま着用しての移動が可能です。
モードに関しても、一部の機械ではオーシャンウェーブといって、もともとの呼吸の波形に合わせた優しい陽圧設定が可能であったりします(このモードにこれ以上の意味はありません)。また、既存のCPAP(continous positive airway pressure,持続陽圧換気)や、それにpressure supportを行うなど基本的な陽圧治療に関する機能は十分に備わっています。
ただ、酸素濃度の問題があります。在宅用の機械はあくまで陽圧にすることだけが目的ですので、酸素の投与に関しては、一応の機構しかついていません。それが機械自体かチューブのどこかに酸素のカヌラをつないで流すというものです。これは、かなり不安定な投与方法になります。
送られる酸素の量が多ければ、薄くなります。特にリークが多かったり、呼吸回数が多いと、1分間に送られる空気の量が増えますので、酸素濃度は低下していきます。
目安としては、O2 15Lで流し続けて、かなり安定しているときでFiO2 40%。急性期の不安定な時では、FiO2 30-35%程度と考えていただいていいと思います。
以前にきちんとした非侵襲的な陽圧換気の呼吸器が1台しかなく、陽圧換気自体を離脱するか在宅用に切り替えるしかなかったのですが、切り替えの時には、呼吸器の設定がFiO2 35%以下でないとSpO2が維持できなかったという経験があります。
 
次に、ちゃんとした呼吸器による非侵襲的陽圧換気療法についてですが、これは何といっても、酸素の配管と直接つなぐので、FiO2 100%まで設定が可能です。
また、CPAP(continous positive airway pressure,持続的な陽圧。CPAPには、圧そのものとそれによる治療の2つの意味があります)、pressure support圧(PS)、呼吸回数といった基本的な設定はもちろん、PSをどれくらいの時間で上げるかの設定も可能です。
これらの設定のコツは、心不全の時には、患者さんの使い心地の良さを追求します。多くの場合には、CPAPのみで、それも低めの圧(4-6cmH2O)でいけることがほとんどだと思います。これに、呼吸の補助として、軽いPSを上乗せすることもあります。だいたい2-3cmH2O程度でいいと思います。また、このPSもゆっくりと圧が上がるような設定にしたります。また、機種によってはFLEXmodeといって、吸気から呼気に代わるときに分圧がふっと抜けて、呼気がしやすくなるような設定もあります。
 
NiPPVは、患者さんが不快感を示すとできなくなり、どうしても陽圧が必要だと、そのまま寝かせるか、気管挿管しかなくなるため、いかに心地よい状態にするのかが重要です。
ただ、どうしても設定として、高いCPAPとPSが必要なことはあります。それでも、元の状態より呼吸の補助が効くので、楽に呼吸ができると継続できる方もいますが、そうでない方もいます。
その時には、どうするかですが、まずは、マスクの形態を見直してみましょう。人によっては、顔全体がいいとか、鼻だけがいいとか、鼻だけでもピロータイプといって、鼻に突っ込むタイプがいい方もいます。特にシリコン製のピロータイプは、リークも少なく、そのまま話や食事もできます。そのため、急性期だけでなく緩和医療などでは有用なことがあります。
次に、鎮痛や軽い鎮静も考慮します。特にモルヒネやフェンタニルなどによる鎮痛はマスクの不快感をやわらげるますし、麻酔薬のプレセデックスは呼吸抑制が少なく、循環にもいい作用がありますので、心不全には適した薬剤といえます。
用量は、かなり少なくても大丈夫です。プレセデックスに関しては、1日に0.5-1bバイアル(100-200ug)を24時間持続注射で十分なことが多いです。
 
最期は、気管挿管による呼吸管理です。心不全では、気管挿管まで行くことはあまりないと思います。
最重症であったり、肺炎や他の重症の感染症を併発している場合には、気管挿管による人工呼吸管理を行いながらしっかりと治療をすることが必要になります。ちなみに、感染が安定しても気管挿管から離脱できそうにない時には、早めに気管切開を行ってください。1週間から10日程度が見極めの期間になると思います。これが遅れて、ずっと鎮静で治療を行うと、肺炎などの呼吸器関連の感染症がづっとついて回ります。
気管切開すれば、麻薬やアセトアミノフェンの持続注射や内服などでの鎮痛だけで行けますし、リハビリなども並行して行えますので、気管挿管が長期間(目安として2週間以上)必要と判断されたら、気管切開に移行したほうがメリットは多いかと思っています。
また、心不全の時には陽圧がかかってもそれほど血圧は低下しませんが、心不全が改善傾向にあるときとか、感染性のショックの時などは、肺にかかる陽圧は、心臓を外から抑え込んで、10cmH2O程度の陽圧で4mmHg程度の障害となります。右房圧や左房圧がこの程度上昇するのですが、静脈の還流からするとこれは抵抗・障害となるため、心拍出量の低下を伴い血圧低下の原因となりますので、静脈の中の血管内の血液量などによっては、特に鎮静が効いているとなおされ血圧を低下させますので、注意が必要です。