心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(13:心臓が拡大するということは収縮性が低下しているということ)

心筋の拡張・収縮機能の不全が、狭義の不全心であると考えます。

 

拡張型心筋症という疾患があります。

拡張型というくらいなので、拡張しています。

どこがというと、基本的には左室が拡張していて、左室の動きが悪くなっているものを、ざっくりと拡張型心筋症といいます。

今は、心臓のMRI検査なども比較的簡単にとることができるようになりましたが、歴史的には、心臓カテーテル検査の左室造影検査、今は、心臓超音波検査(心エコー)で評価した値を基に診断することになります。

 

「心エコー、左室傍胸骨像」で画像検索してみて下さい。

向かって、右側に左房、左側に左室、左房の上に大動脈という画像がたくさん検索されると思います。

この画像を基に、左室の拡張末期の径がある程度の大きさ以上(50mm以上とか)で、何らかの式で計算した左室駆出率(心拍出量÷左室拡張末期容積)がある程度低下しているものを拡張型心筋症といいます(駆出率 40%以下とか)。

ちなみに、特発性といって、原因がわからない(少なくとも現在の医療レベルで調べられる範囲で)特発性拡張型心筋症は、厚生省の難病指定ですが、診断の上での具体的な数字は書いていません。[左室内腔拡大と駆出率低下(びまん性)]と書かれています。具体的な数字は、たぶん、かけないと思います。

左室の壁厚が全体的に7mm程度で、拡張末期径が50mmで、駆出率 35%は、拡張型心筋症といえるかどうかというと、言えると思います。すこし、微妙で、決して大きくはないですが、普通よりは少し大きいので、拡張型心筋症といえると思います。

ただ、拡張末期圧が40mmで、駆出率が30%では、拡張型心筋症とは言えないと思います。

できれば、55mm以上で、駆出率40%以下がすっきりと拡張型心筋症といえますが、50-55mm程度で、駆出率40-50%程度も拡張型心筋症にはなると考えられます。

 

さて、なぜ左室が大きくなるのかというと、収縮性が低下しているためだと考えます。

収縮性が低下すると、小さい器のままだと、かなり心拍数を早くしないと体が必要とする循環血液量を出せません。(1回の心拍出量が少ないので)

ただ、もともとの器(左室のサイズ)を大きくしてしまえば、少し動くだけで1回の心拍出量を大きくできるので、収縮性の低下がおこると、それに反応して、心臓は大きくなるように心筋および間質組織に刺激を出します。

心筋細胞の数は増えませんが、心筋細胞内の蛋白は増やせますので、ミオシンやアクチンなどが増加して、心筋は少し肥大することがあります。しないこともあります。

心筋細胞の数はふえないまま、大きくなりますので、心筋細胞の密度は低下します。そのため、細胞間に線維成分が増えます。これが心臓の線維化です。

心筋自体が何らかの原因で、死滅して線維化することを置換性線維化といいますが、これは心筋梗塞が起こった場所や、心筋炎の場合に起こります。

拡張型心筋症も、心筋細胞が、ただ細胞レベルで機能不全になっていて、全体のパフォーマンスが落ちて、大きくなることでそれをカバーしている時と、心筋が何らかのカスケードで死亡(アポトーシスなどで)していき、置換性の線維化を起こしながら拡大していく場合があると推測されます。

 

ここで伝えたいことは、心筋細胞の収縮機能の低下は、心臓のサイズの拡大という結果になるということです。

心臓の収縮性が良いまま、大きくなることは、ある種のホルモンの過剰など以外にはないということです。(成長ホルモン過剰では、ただ大きくなることがあります)

これは、左室にも右室にもいえることです。

そのため、右室が大きい場合は、まず、弁膜症と右室そのものが悪いこと、また、別項目でお話しますが、肺高血圧を疑います。(初めての人に関しては、先天性疾患の短絡性疾患ももちろん考えます)

左室が大きい場合には、弁膜症と左室そのものが悪いことを考えます。

注:慢性的な高血圧だけでは、普通は拡大はしませんが、時に拡張相といわれるかなり困難な状態や、高血圧緊急症では、拡大することがあります。