心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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HDLに含まれるコレステロールは、いいものか?

HDLコレステロールは、一般に善玉コレステロールといわれます。

HDLは役目として、LDLやVLDLに入っているコレステロールを回収して肝臓に戻しています。HDLに含まれているコレステロールがいいことをするというよりは、しっかりと回収作業が進んでいるという意味で、HDLコレステロールが善玉といわれていると思います。

また、臨床研究でも、男性 40-70mg/dl(100という意見もあり)、女性 50-100mg/dl(130という意見もあり) 程度の人が、脳心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中)が少ないとされていてます。

HDLとかLDLというのが、一般的ではなかったときのコレステロールはすべて高いのはだめという考えから、HDLに含まれるコレステロールだけは低いのがだめということになりました。この影響で、それまで高脂血症といわれていた病名が、HDLコレステロールが高くて総コレステロールが高い人は別にいいということになりましたので、病名が脂質代謝異常へ変わりました。

(ま、今も説明の時にわかりやすく高脂血症ということはありますが、正しくはないです)

 

では、HDLに含まれるコレステロールは高ければ高いほどいいのかというと、上限を示したように高すぎると、脳心血管疾患が増えてきます。

LDLに超悪玉といわれるsdLDLがあるように、HDLにも粒子の小さいものと大きいものがあって、実はいいことをしているのは、粒子(袋)の小さいHDLなのです。そのために、大きなHDL粒子に入っているコレステロールは、よい指標にはならずに、小さいHDL粒子に入っているコレステロールのみが、よい指標になります。

HDLの粒子の大きさは測定できますが、簡単には測れません。ただ、現時点ではよほど高くない限り気にする必要はないと思います。

また、LDLコレステロールに関しては、複数の治療法があり、薬剤の副作用がでなければ下げれるだけ下げればいいということがわかっています。

しかし、HDLコレステロールに関しては、低いことは、運動・食事が不適切であることのサインであることが多く、運動食事療法を頑張っていただくきっかけにはなりますが、現時点で適正な値にするような薬はありません。

実はHDLコレステロール値を増やす薬剤はあり、薬を使うとHDLコレステロールが100mg/dlくらいになるのですが、LDLコレステロールを下げる薬のように脳心血管疾患や生存率の改善は示せず、HDLコレステロールを増やすということには意味はないようです。

あくまで、HDLが機能して、LDLやVLDLからコレステロールを引き抜いているということ自体に意味があるようです。

今後は、小さいHDL粒子がいくつあるかとか、HDLという袋にはApoAという蛋白が1個ついていますので、このApoAとHDLコレステロールを割り算するとか、HDLの引き抜き能を測定する方法ができるようになったりとか、本当に善玉な成分を測定できるようになるかもしれません。

 

ただ、現時点では、HDLコレステロールはよほど高くない限り、善玉コレステロールという呼び名でいいと思います。