高齢者の高血圧治療に関しては、日本老年医学会から高齢者高血圧診療ガイドライン2017が発表されています。
この中では、多くの臨床研究をもとにさまざまなことについてどのようにすればいいかが詳細に述べられています。
すごく簡単にまとめると、高齢者であっても降圧による心脳血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)を減少させることはできるということです。
この点だけをふまえて治療を行えばいいと思います。
認知症への影響は現時点ではない(よくもわるくもない)と考えられていますし、もちろん高齢者の死因は徐々に、脳血管疾患から肺炎などに変化していきますので、血圧を下げたところで予後の改善効果はありません。
ただ、肺炎ということでいうと、特に誤嚥性肺炎といって、痰や食事の残渣が気管から肺のほうへ流れていってしまい、それが原因となって起こる肺炎があり、寝たきりに近い高齢者の死因はこれが多いのですが、それに一部の降圧薬が有効との報告があります。
ACE阻害薬という薬は、降圧に加えて心筋梗塞などの減少効果もある薬剤ですが、副作用で咳嗽があります。その咳嗽が高齢者では副作用ではなく、誤嚥したものを咳で出すことにより、誤嚥性肺炎が減るといわれています。
また、このガイドラインが対象にしているのは、あくまで臨床研究の結果からまとめられたものですので、必然的に高齢ではあっても、特に薬剤介入したような研究は、臨床研究を理解できて、サインできる能力が十分にある高齢者ということになります。
また、観察研究でも、海外では日本と終末期といわれる最期の期間の治療が大きく違いますし、日本の観察研究では、臨床研究に理解があり、参加する労力を払うような施設が対象ということになります。
様々な制約があるのは仕方ないことですが、これは重要な点だと思います。
特に80歳以上の高齢者の血圧の管理は、あくまで脳血管疾患を予防し、それによるADLの低下は防ぐということが目的になります。
また、どうしても加齢性に、心・腎・呼吸機能は低下しています。交感神経の反射系も低下しており、薬剤の作用による過度な影響を受けることが予想されますので、内服を始めるときでも少量から始めて、1-2週間程度の早い目に受診して頂くということが大事だと思います。
さらに我々も含めて、高齢者になっていきます。
ずっと通っている患者さんが、知らない間に高齢者になっていることもあると思います。そのため、過度な降圧になっていないか、処方している薬がもう必要ではなくなっているのではないかと、長期にお付き合いしている患者さんの処方内容を見直すことも重要だと思います。