心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

高血圧とは。そもそも血圧とは何か。治療はした方がいいのか。

 

 高血圧, 症状・診断・治療について(1)

 

 高血圧とは、昇圧系のホルモンの過剰、または、動脈硬化などの血管不全とその人にとっての塩分の過剰摂取などから腎臓をはじめとした血圧の調整系が、血圧の規定値をあげている状態です。 

 

要約

1) 最低限の血圧は、末梢の組織で血管(血液)と臓器(組織液)の間で水や必要な成分をやりとりするのに必要。

2) 血圧を制御しているのは、基本的には交感神経系と腎臓(+副腎の二つの臓器を中心としたホルモン系)。

3) 血圧は、血流と末梢血管の抵抗、大動脈の柔らかさできまる。

4) 高血圧に、症状はない(高血圧緊急症を除く)。

5) 高血圧の診断には、2つの診断がある。まずは、本当に高血圧かどうかを診断すること、続いて、特殊な病気に付随する治療可能な高血圧かどうかを診断することである。

6) 体は血圧を上げずに塩分を体外に排出する機構を持つ。しかし、何らかの理由によりその機構が異常となり、塩分摂取に伴い血圧が上がるようになる。

7) 治療は、塩対策。食事での塩分の摂取制限と、体から塩分を排泄する降圧薬の内服・注射である。

8) 降圧治療の適応と目標値は、年齢と併存疾患により変わる。特に、腎不全・糖尿病・脳心疾患には、個別対応が必要。

9) 個人的な見解では、若ければ若いほど正常血圧(130/80以下)にしておいたほうがいい、可能な範囲で。高齢(およそ80歳以下)でも、140-150/90程度にしておいたほうがいい。超高齢では、よほどのことがなければ、新たに治療を始める必要はない。

 

(1.高血圧 :一番身近な病気)

初回は、非常に多くの人がかかわることになる高血圧を取り上げたいと思います。

高血圧に関しては、ご自身であったり、ご家族であったり、身の周りの人が、現時点ですでに治療を行っていたり、また、治療していなくても、健康診断で指摘された経験がある方も多いのではないでしょうか。

 

  (2.高血圧 :そもそも血圧って何?)

そもそも血圧とは何かから始めたいと思います。

血管の中に血液があると最低限の血圧が生じます。血液が流れなければ生きられません。血液を流すために心臓が動くと血圧が生じます。

では、最小限の血液が流れる圧でいいかというと、そうではありません。血液は水や酸素、栄養素を組織に運ぶ役割を担っています。流れてきた栄養素は、毛細血管で血液から組織に、えいやと押し込まれたり、流し込まれたりします。その時の駆動力の主なものが血圧です。

 

この駆動量を維持するために血圧が上がったりするのかというと、そうではありません。これに必要な血圧はそれほど高くなく、体はこの圧を維持するために血圧をコントロールしていません。

血圧を決めている最大の要素は、脳への血流の維持と腎臓の血管内圧の維持です。立位でも運動時にも脳に血液が行き渡ることと、また、腎臓で安定的に尿を作るために血圧がコントロールされます。

特に脳の血流はある一定の量を安定して流れていればいいので、あまり複雑にはコントロールされていませんが、腎臓に関しては、さまざまな状態に対して安定して尿を作り、尿毒素を排泄し、ナトリウムを排泄することが重要ですので、安静時の血圧の制御には腎臓がかなり重要な働きをします。

 

つまり、運動など一過性の上昇以外の、通常の血圧の上昇を作るのが腎臓による制御です。

 

腎臓は、尿毒素を排泄するために尿を作り、尿から塩分を体の外に出す。

正常の体であれば、あまり血圧をあげずに塩分を排泄する機構を持っています。

ですが、何らかの理由(過剰な塩分摂取、もともと塩分に反応して血圧があがりやすい、たばこや加齢による動脈の硬化など)により、その機構が維持できなくなった時に、血圧があげるのです。

 

腎臓の血圧の制御と血圧の構成要素について、次回お話しします。