心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

高血圧とは。そもそも血圧とは何か。治療はした方がいいのか。(5)

 (ほとんどの高血圧は明らかな原因がない)

一般論ですが、病気というものは原因によっていくつかにわけれます。

風邪や肺炎といった感染症のように、人にとっては有害な外的な因子によって生体が攻撃され、それに対して体が正常な反応を起こすことで、徐々に快方に向かったり、外的な因子が生体の反応に対して強すぎて対応しきれずに重症化するようなものや、

関節リウマチなどの自己免疫性疾患のように、体が少しの刺激や本来刺激がないのに、過剰に生体反応を起こしてしまうようなもの。

一部のがんやパーキンソン病などのように、本来除去しなければならない異常なタンパク質が、それを本来は除去すべき体の正常な処理サイクルに、少し異常があり、時間を経て症状的や臨床検査的に異常として現れるもの。

動脈硬化性疾患のように、複数の原因となる疾患により時間とともに徐々に進行するような病気があります。

 

本来、塩分摂取に対しては、一過性にさまざまな生体の反応が作動して、血圧をあげずに塩分を排出させる機構が働きます。

しかし、一人一人の個体が持つ許容量をすこしずつ超えた量の負荷がかかり続けると徐々にこれらの正常な反応が適切に起こらずに、過剰反応となったり、負荷の持続が基準となる値を異常なレベルで維持するようになったりと変化していきます。

 

つまり、人の体というのは、負荷が少しで、体が対応しうる程度の時(波が小さい)は、戻るまでの時間は様々ですが、正常の状態に戻ります。(いわゆる動的平衡)

また、負荷が大きくても、一時的であれば、これも徐々に体は元に戻ることが多いと考えます。

(感染拡大予防の観点や解熱が1日程度早いといことはあるが、若い人がインフルエンザでタミフルを必ず飲む必要はなく、ほとんどの若者はインフルエンザウイルス感染を自力で感知させられる)

しかし、許容を少し超えた負荷が重なったり、超えない範囲でも正常に戻る前に、さらなる小さな負荷でも繰り返しかかることで、徐々に疾患を発症する方向へ体が反応していき、一度その方向へ体の反応が進んでいくと、自力ではもとには戻らないということが往々にしてあります。

(がんですら、初期のわずかな異常を免疫によって適切に処理されていれば、多くは発症しません。)

 

前述のInternational Study(BMJ. 1988 Jul 30; 297(6644): 319–328)などから考えると、人は2-3g/日程度の塩分摂取であれば、血圧をあげずに生きていける。それを超えると、塩分摂取量に従って、塩分に対して血圧を適当に保ち続ける適応力の低い人から、徐々に高血圧となっていくということだと考えます。

 

現在の医学・医療レベルで血圧をあげる原因の判明していない高血圧のことを本態性高血圧といっています。

この中には、塩分に対して反応性がかなり影響していると考えています。

 

(本態性高血圧)

本態性高血圧というのは、現在の医学・医療のレベルでは、あきらかな異常がない、直接因果関係の証明されている原因がない場合に用いられており、その多くは、今まで述べたような機序によると考えています。 

もちろん、医学は日々進んでいますので、 現在明らかではない原因がわかったり、塩分摂取が直接血圧をあげる機構が明確になれば、高血圧がさらに分類させれていくでしょうし、

塩分以外の何かの持続的、または、断続的な刺激(喫煙、精神的なストレス)が直接的または間接的(交感神経などを刺激)に作用して、血管不全を優先して高血圧を形成するような病態ももっと明らかになるかもしれません。

ちなみに、運動による血圧の上昇と、精神的なストレスによる血圧の上昇は、同じ交感神経の亢進が起こりますが、運動のように体が必要な血液量とする血液量が増えるのと、精神的なストレスでは血液量の増加が伴わずに交感神経が亢進して、抵抗血管の抵抗が上昇するという点が決定的に異なります。この抵抗血管の上昇が繰り返されると血管の硬化が起こるともいわれています。

 

さらに、本質的なことが分かれば、医学的に高血圧自体の名前が、血圧が高いという検査値による疾患名から原因となる病態によりかかわる名前になる可能性もあります。

例えば、痛風という臨床症状中心の疾患が、高尿酸血症から生じるということがわかったり、糖尿病という血糖値が高く推移するという病気の多くに、耐糖能障害という病態があることがわかったりと。

 

では、現時点で本態性高血圧のほかにどういったものがあるかというと、血圧をあげる作用を持つホルモンを過剰産生する疾患に関しては、いくつかわかっていてますし。また、多くの疾患の原因にもなりうるのですが、薬剤性高血圧も重要です。

 

次回以降は、まず、高血圧の2つの診断について、話していきます。

一つは、まず、高血圧なのかどうかをどのようにして診断するのか。

もう一つは、いわゆる2次性高血圧なのかの除外診断を行うことです。