心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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僧帽弁閉鎖不全症の重症度評価はカラードプラーから始めましょう

 
僧帽弁閉鎖不全の、心不全を起こすかどうかという観点からみた疾患の本態は、逆流による心室の拡張末期容積の増大です。
弁膜症、単体としての疾患の本態は、収縮末期にどれだけ僧帽弁が開放しているかということです。つまり、僧房弁の開口面積ということになります。弁膜症の重症度に血行動態的な要因が加わって、弁膜症による心不全の原因となります。
 
現在、このような観点から、逆流量と開口面積の2つによって重症度が評価されます。
 
さまざまな指標がありますが、結果的にはどちらかに起因します。
また、拡大する拡張末期容積は、心不全の自覚症状として、NYHA分類として評価されます。
 
僧帽弁閉鎖不全の重症度分類のお話です。その次に、弁の異常そのもののお話をしたいと思います。
(特に、あえて分けるなら、内科的には重症度の判断が、外科的には原因が重要だと思います。)
 
 
まずは、僧帽弁の弁自体か、腱索に異常(基本的には腱索があるレベルできれている)がある1次性僧帽弁閉鎖不全症の重症度に関してです。
ほとんどの項目が心エコーによって測定されます。
それらの項目の中でも、基本的には逆流率が50%以上というのが1次・2次ともに共通の重症度の基準になっています。
これをどのようにして測定するかというと、心エコーです。そのため、心エコーでの評価をみていきます。
 
1次性僧帽弁閉鎖不全症は、前提として、左室および左房機能障害はなく、ただ、僧帽弁閉鎖不全症があるということがあります。
そのうえで、僧帽弁閉鎖不全症が、そのものが悪化したり、異常な決行動態が徐々に心臓に機能的な障害を及ぼし、心不全症状が出現したら、手術を考慮するというのが基本路線です。
ただし、現時点では、弁形成術がずいぶんと進歩してきましたので、弁置換術のような弁の耐用年数や弁機能不全、抗凝固などを考える必要がなくなってきましたので、術前に弁形成でいけると考えられるものに関しては、機能障害による心不全症状など待たずに早く手術すればええやないかとなってきています。
 
さて、話がそれましたが、エコーでの評価方法です。基本的な参照は、日本循環器学会のガイドライン(弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン2012年改訂版)とアメリカの循環器学会であるAHA/ACCのガイドラインを中心に、ヨーロッパのガイドラインも踏まえお話したいと思います。
 
エコーでの僧帽弁逆流の評価は、まず、カラーで見て、チラ見でいい軽症か、きっちりと計測して評価しないといけない重症化、その間の中等症かを判断して、そのうえで、必要な閉鎖不全に対しては、逆流量か、弁口面積を計算することになります。
 
 
#僧帽弁閉鎖不全症の定性的評価
 カラードプラ―ジェット面積
 (ガイドラインからの参考)ジェット面積:左房の40%以上を占めるカラーの時は重症、20%以下または4cm2以下の時には軽症
 
カラードプラ―のジェットは基本だと思います。あくまで上の値は参考程度に考えていただければ、という値だと思います。数値はありますが、実際上は数値で段階的に分けるというわけではなく、3段階程度の評価(軽症、中等症、重症)にわける、定性評価になります。
 
カラードプラーのジェット面積は、基本的には細かい計測が必要かどうか、重症度の細かい評価をしないといけなさそうかどうかということを決める、一番基本となる判断で使われているというのが実情だと思います。
要は、[重症か重症気味の中等症]、または、[軽症か軽症気味の中等症]かの2つにわけるのに、カラードプラーのジェット面積を参考に視覚的に判断していると思います。そのうえで、重症か重症気味の中等症かのどちらかに分けるときには、判断の根拠となる数字的な結果(定量評価)を示しなさいよということです。
 
以前は到達度として、左房のどのレベルまで逆流が到達していればどうだこうだというのがありましたが、これはもう使いません。
ただ、短くて、面積の狭いカラーが、収縮期の一部でみられるときには軽症でいいと思います。
重症の時には、ある程度太いカラーが全収縮期にわたってふいていたり、心房の中を旋回するようなジェットであったりします。これら所見があると重症の可能性がかなり高いと思います。
 
中等症はその間です。他の指標での診断でも同じですが、中等症の診断は、軽症に近いか、重症に近いかによってかなり意味合いが変わります。
軽症ではないけどというという程度であれば、中等症もあれば、重症とはいえないけどもという中等症もあります。かなり臨床的にも範囲が広いので注意が必要です。
 
 
カラーエリアでいうと、エコーの2断面以上、基本的には、すべての断面で、しっかりと僧帽弁の逆流の吹き口から、カラーの中心をとらえて、カラーの長さ、幅(要は面積)、それらの時間による変化をしっかりと追うことが重要です。
ただ、壁面に向かって吹き付けるようなジェットに関しては、面積の評価は困難です。また、弁の逸脱のような弁自体の異常の時のカラーは思いもよらない角度で吹いていたり、特に2腔像(2ch)で弁の直下を這うように、そのまま左房側(中隔や反対の側壁)を沿って回旋しているようなカラージェットは、意識しないと見逃すことがあります。人によって多少は異なりますが、左室の短軸で僧帽弁を正面にとらえて、後尖の向かって3時と9時の弁不全(部分的な弁の逸脱)は、このようなすこしいやらしいカラージェットになります。回旋している雰囲気とほかの項目で評価をしていくことになります。