心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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僧帽弁閉鎖不全:一次性と二次性の違い

二次性僧帽弁閉鎖不全症に関しては、以前にお話しさせていただいており、参考にしてください。
 
要は、心筋自体に異常があり、左室の拡張末期から収縮期にかけての期間に、僧帽弁と乳頭筋の距離が離れていることが原因です。この距離が離れることで収縮期にかけて僧帽弁の前尖と後尖の接合部に孔がみられます。
本来僧帽弁を占める力は、左室の圧の上昇で、これにより僧帽弁が左房側へ移動していき弁は閉鎖します。また、収縮自体は長軸方向にも起こるために、収縮期に乳頭筋と僧帽弁の距離は近くなります。
また、おそらく僧帽弁逆流があるときには、ベンチュリ―効果(速い流速の流体は周りより圧が低くなる)が働くので、これによっても弁が閉鎖するのを助けると考えることもできます。
とにかく、それらの力をもってしても、僧帽弁の本来の閉鎖位置まで持って行けず、左室側で何とか閉じるか閉じないかという状況で、少しだけ閉じれていないのが二次性(機能性)僧帽弁閉鎖不全です。孔は、本来少しだけです(重症でも0.4cm2)。
 
 
さて、心エコーのおける一次性と二次性の僧帽弁閉鎖不全の評価におけるもっとも大きな差は、僧帽弁の収縮期の開口の形です。
1次性の場合には、逸脱の場合には、比較的円に近い開口になりますので、PISAやカラーがそこまで実感と異なることはないと思います。
しかし、機能性僧帽弁閉鎖不全の場合には、弁が「ニィっ」と笑ったときみたいな長い楕円というかほぼ棒状になるので、観察する断面によってかなり印象が異なります。もちろん、PISAもどの断面でとるかによって全然違ってくるので、本来PISAで機能性僧帽弁閉鎖不全は評価してはいけません。(ただ、これは重症というときの参考にはなります)
 
また、一次性の心室機能は正常で、二次性の場合には異常ということがあります。もちろん一次性でも弁不全が続けば、あるタイミングで心室機能は低下します。そして、これが手術の時期に大きな影響を与えます。心筋の機能不全の原因が弁機能不全ですので、これを改善させれば心機能の低下はとまるか、改善するはずです。
また、低心機能に合併した一次性僧帽弁閉鎖不全症もあります。これは手術が必要です。低心機能だからすべて二次性ではありません。弁の閉鎖不全の原因が何かを注意深く観察しましょう。弁の異常でできている弁逆流は改善させると、心機能の低下が止まったり、長期的に良くなってきたりすることが多々あります。
(手術は自体は、弁逆流が心機能に与える影響と、術合併症と弁置換の可能性、弁の寿命などを考慮に入れて決定されます。極端な話、手術自体が安くて、手術リスクがゼロで、すべて弁形成でいけるか、置換する弁が一生異常なく持つのなら、すべて手術すればいいということになります。)
 
これに対して、二次性は、全体の機能はともかく心筋に異常があることが前提です。もちろん、局所的な心筋の不全で機能性僧帽弁閉鎖不全が重度に起こっているが全体の心機能はそれほど悪くないということもありますが、そういうときでも全体的にやはり異常なことが多いです。
また、心機能の低下の根本の原因が僧帽弁機能不全ではないということです。そのため、心機能が僧帽弁の逆流を治しても、それが根本的な原因ではないため、結局心機能低下を起こしている根本が、進行性であった場合には、僧帽弁逆流をなくしても心機能低下は進行し、結局は心不全を繰り返すということになります。
 
一次性と二次性の大きな違いは、この弁機能不全とそれによる開口の形の違い、そして左心機能に与える影響です。
これらを理解したうえで、心エコーでの評価を行い、評価する必要があります。
少し述べたように、低心機能だからすべて二次性ではありません。弁の状態やジェットの吹き方などを十分に評価する必要があります。
 
二次性の心エコーでのカラージェットの特徴は、後尖のほうが閉鎖が悪く(弁輪に対して立っていること(垂直に近い)が多い)、前尖が後尖に比べて閉鎖しているために、まるで前尖の逸脱のようなジェットになることが多いです。後尖の動きの制限などは十分に注意しましょう。