心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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(再編集)「塩分摂取と血圧の関係:腎臓の役割と高血圧のメカニズム」

塩分の摂取量と血圧が相関する理由の根拠として重要なのが、圧-利尿(ナトリウム排出)曲線です。これは、ナトリウムの排泄量(=摂取量)と平均血圧の関係を示したものです。

正常な人の腎臓では、通常の塩分摂取量から過剰摂取量までの範囲で塩分を排出するために、血圧はほとんど上昇しないことが示されています。一方で、高血圧患者、すなわち塩分感受性が高い素因を持つ人や、何らかの原因(昇圧に関与するホルモンがわずかに高い、血管が硬くなっているなど)で血圧が上がりやすくなっている人では、正常な塩分摂取量でも、その塩分を排泄するには、正常者よりも高い血圧が必要になります。また、塩分摂取が増えると、それにほぼ比例して血圧が上昇することが示されています。食塩非感受性とされる人は、塩分摂取あたりの昇圧が少ないですが、高血圧の人は多かれ少なかれ、塩分摂取によって血圧が上昇します。

ここで重要なのは、腎臓が平均血圧をコントロールしているという点です。平均血圧は、電解質を一定に保つための、塩分排泄に必要な要素だからです。

(塩分摂取と生体の反応)

まず、塩分は腸管のENaCと呼ばれるナトリウムチャネルなどを通じて血管(門脈)に吸収され、肝臓を通過して心臓に到達し、全身に分布します。塩分摂取後の血液は、摂取前よりもクロール濃度が増加し、このクロール濃度の上昇が腎臓の遠位尿細管のマクラデンサで感知され、腎臓から分泌されるレニンが低下します。このレニンは最終的にアンギオテンシンIIとアルドステロンを上昇させ、血圧を上昇させ、腎臓で塩分の再吸収を促し、体に塩分をため込もうとする反応を引き起こします。そのため、レニンの低下は、血圧の上昇抑制と塩分再吸収の抑制をもたらします。すなわち、塩分摂取による一過性の変化により、血圧の上昇を緩和します。

アンギオテンシンIIは、腎臓内の血流分布をコントロールします。腎臓の中心部は塩分を積極的に再吸収し、外側部分は塩分を素通りさせます。アンギオテンシンIIは塩分を再吸収させるために、腎臓の中心に血流を集める作用を持っています。そのため、アンギオテンシンIIが作用していない状態では、腎臓の外側の血流が維持され、塩分の排泄が促進されます。尿量の増加は、次に説明するバソプレシンが決定します。

(交感神経とホルモンの変化)

塩分を摂取すると、水分も一緒に吸収されるため、静脈還流量が増加し、一過性に心拍出量も増加します。動脈の血液量が一過性に増加すると、血管径が拡張し、血液量が増えた分だけさらに広がります。一部の動脈(頚動脈や大動脈など)には、この変化を感知する受容体があり、血液量の増加により交感神経が抑制され、血圧を下げたりレニンを減らしたりする反応が起こります。また、心臓にも血液量の変化を感知する受容体があり、心臓に戻ってくる血液が増えると心臓が張り、それを感知して塩分と水分を排出させるホルモンを分泌します。このホルモンは血管を拡張させ、心臓に戻る血液を減少させる効果もあります。

レニンや交感神経、心臓のホルモン(ANPなど)が一時的に変化することで、体は適切に塩分を排泄するように調整します。塩分が上昇すると血液の浸透圧が上昇し、それに応じてバソプレシンという抗利尿ホルモンが増加します。このホルモンは腎臓に作用して尿量を減らし、血管を収縮させて血圧を上昇させる効果があります。また、喉の渇きを促し飲水行動を誘導します。すなわち、塩分摂取には短期的に血圧の上昇を防ぐ機構が存在しますが、塩分の過剰摂取が持続すると、これらの機構が徐々に鈍化していきます。

(高血圧患者の場合)

高血圧患者(特に白人)では、交感神経の活動やアンギオテンシン、アルドステロンなどの血中濃度が上昇していると報告されています。推測ですが、これは持続的に塩分濃度を下げる機構が徐々に鈍化するに伴い、さらなる塩分過剰状態に対応するために、定常状態でそれらを高く保つことで瞬間的な塩分過剰に対応しようとしているのかもしれません。

(本態性高血圧)

本態性高血圧とは、現在の医学では明確な原因が判明していない高血圧を指します。この中には、塩分に対する反応性が大きく影響していると考えられています。医学が進歩すれば、塩分摂取が血圧を上昇させる機構が明確になり、より具体的に高血圧が分類されるかもしれません。また、塩分以外の持続的な刺激(喫煙や精神的ストレス)が血圧に影響を与えるメカニズムもさらに明らかになる可能性があります。

(高血圧の診断)

高血圧が疑われる場合、健康診断などで血圧を測定するのが一般的です。血圧は脈拍などと同様、一日の中で変動します。安静時でも変動し、夜間就寝中は通常血圧が低下します。また、白衣高血圧といって、医師の前で緊張して血圧が高くなることもあります。

このように変動する血圧をどう評価して高血圧かどうかを判断するかですが、現実的ではありませんが、動脈に圧測定用のコンデンサを留置してモニタリングするのが最も正確です。

心不全患者の場合、右心室の圧上昇をモニタリングするシステムがあります。動脈に直接コンデンサを留置する必要性は低いですが、安全な方法が確立すれば24時間計測が可能になるかもしれません。

血圧の測定方法は大きく分けて3種類あります。(1)診察室血圧、(2)家庭血圧、(3)24時間自由行動下連続血圧です。信頼性は低くなりますが、外出先での測定もあります。

診察室での血圧測定は、正確な方法で行うのが理想ですが、日常の診療や健康診断では難しいことが多いため、家庭血圧をきちんと測定して評価することが重要です。