最近、心房細動の患者が、心不全増悪で入院しました。
心房細動ながら徐脈傾向で、心不全のパターンとしては、循環不全はおそらくないが要注意。肺水腫はなく、肺うっ血も目立たない、ただ、全身の浮腫と胸水。
治療は、循環不全に留意しながら、利尿薬で除水というところで、1週間程度でそれなりに安定しました。
入院時、甲状腺機能は、TSHが若干高値で、freeT4は0.3くらいと機能低下状態。
心不全が落ち着いた段階で、チラーヂン25μを0.5Tから開始。
心不全は落ち着いてきたものの、2週間程度の段階で、頻脈傾向となり、肺水腫まではいかないものの、呼吸困難を伴う肺うっ血状態で不安定化しました。
チラーヂンを中止して、徐脈に誘導して、再度症状は安定しました。
数値上は確かに甲状腺機能低下。
浮腫などはあるものの、それは心不全によるもので利尿薬で改善したこともあり甲状腺機能低下によるものではない。確かに甲状腺機能が低めではあるものの、別にそれによる典型的な症状はなかったわけです。
あまり深く考えずに、チラーヂンを導入したものの、その必要はなかったのだろうなと思いました。
脂質異常に関して、特にLDLコレステロールはこれ以上になれば動脈硬化疾患が上がるという値がそれなりの規模の研究でわかっている、血圧も同じ。
ただ、甲状腺を始めとして、多数の普通の人の値を取ってきて、その値の分布から正常値を決めたような正常値の場合は、それなりに低かろうが高かろうが、異常値による症状があるかどうかを慎重に検討して、治療する必要があるのだろうと感じた1例でした。
アンカロンは、よく甲状腺機能低下を引き起こします。もしかしたら、アンカロンは、マルチチャネルとかそういうことではなく、甲状腺機能を適度に低下させて、それが心筋の活動性を適度に低下させたり、全身の酸素の需要を低下させたりしているのがいいのかもしれません。