心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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急性心筋梗塞の時に、スタチンを静注してみたら。

J Am Coll Cardiol. 2020 Mar 12
Guiomar Mendieta, Soumaya Ben-Aicha, Manuel Gutiérrez, Laura Casani, Monika Aržanauskaitė, Francesc Carreras, Manel Sabate, Lina Badimon and Gemma Vilahur
Intravenous Statin Administration During Myocardial Infarction Compared With Oral Post-Infarct Administration

 

少し心不全とは離れますし、抄録を読んだだけですが、上記の論文をみてみます。

 

急性心筋梗塞の時には、来院後可及的速やかに、いわゆるカテーテル治療を行うことが重要で、いかに早く行えるかに対して(来院後90分以内)保険点数が加算されるくらい重要です。

それはそうなのですが、いつもカテーテル治療をしていて、何か同時に心筋保護的な薬剤を投与したらもっと良い経過になるのではないかと思っていました。

思ってはいてもできることは限られていますので、アスピリンと胃薬と同時に、スタチンをカテーテル室に入る前に、多めに飲んでもらっていました。(基本的にアトルバスタチン20mg以上か、ロスバスタチン5mg以上)

ちなみに、プラビックスは、手術は不要と判断された段階で飲んでもらっていました。

 

今回の論文では、ブタですが、心筋梗塞を作って、A1:静注スタチン+内服スタチン、A2:スタチンなし、A3:内服スタチンのみの3群に分けて、42日間治療を行ったようです。そうすると、静注のスタチンを使うと、梗塞サイズも小さく、血液検査のバイオマーカーも炎症という意味でよかったよという結果でした。

 

いきなり、人にスタチンを静注するわけにはいきませんので、まずは、カテーテル前にスタチンを飲んでもらうというのはどうでしょうか。

 

ちなみに、心筋保護という意味で、急性心筋梗塞のカテーテル治療中は、血栓をできるだけ飛ばさないということを意識していました。閉塞している冠動脈にワイヤーを通しただけでも開通したものは、しばらくなじませるのに、5分くらい経過をみて、次に直接ステントを置きに行っていました。ステントも、基本的に1分以上のロングインフレーションで、イメージとしては、破れてぐじゅぐじゅの粥状効果部分を圧迫止血するイメージです。その後、再度1分のロングインフレーションで終了としていました。(IVUSもステント留置前は病変は通過させませんでした)

ワイヤーだけで通らないときには、バルーンをかけますが、この時のバルーンサイズも、2mmとかの小さいバルーンを4atm程度の低圧で、1-2分程度。ゆっくりと圧迫止血して、固めるイメージでふくらませていました。とにかく、柔らかいぐじゅぐじゅの病変を優しく長時間圧迫して、固めるイメージです。これで一応開通すれば、同じようにステントをロングインフレーションで置きに行ってました。

 

このやり方をする人は少ないと思いますし、エビデンスもありません。

ただ、若いころに、右冠動脈の心筋梗塞で、かなりつらいことになり、そのあと、必死にいろいろ考えた末のやり方です。

一応このやり方をするようになってからは、スローフローを経験しなくなりました。参考程度にしていただければと思います。