心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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心臓リハビリテーション(14)

施設認定についてお話ししようと思います。
 
心リハ1と、心リハ2に分けられます。
大きな違いは、保険点数の差と、心リハ1が基本的に循環器ないし心臓血管外科の常勤医師が1人必要で、心リハ2では特に必要ではないこと、担当する理学療法士または看護師が心リハ1は2名、心リハ2は1名必要いうことになります。
保険点数は、心リハ1では、20分あたり205点の加算になるのに対して、用件が緩い心リハ2では20分当たり125点の加算になります。
専用の
 
心臓リハビリテーションの施設認定を受けるための条件を、医師、施設、人、建物でみていきます
 
医師に関してです。
心リハ1では、常勤の心リハの経験を有する循環器内科または心臓血管外科の医師が1名以上いて、その診療科を標榜し、その人が専任として心リハに携われることが必要です。また、心リハを行っている時間に、それ以外の医師でもいいので、とにかく、循環器内科または心臓血管外科の医師が心リハをやっている時間に勤務していることが求められます。つまり、常勤の循環器内科または心臓血管外科の医師が一人いれば、専門診療科を標榜していると思いますので、その人を専任にして、心リハの施設認定を受けることは可能です。もちろん、その医師に心リハの経験は必要ですので、心リハ実施施設で心リハをしていたとか、ある一定期間の研修を受けたとかということが、実質的には必要となります。申請では必要ありませんが。
(私が、10年以上前に申請したときには、心リハの認定はないが、心臓リハビリテーションはガイドラインや循環器病センターの実施内容を参考にして行っていたということで、心リハの経験は十分にありますと言って申請を行いました)
また、常勤がいなくても、週に24時間以上勤務している非常勤医師が2名以上いれば、併せて常勤相当ということで、心リハ1での申請が可能です。もちろん、2名の非常勤医師は心リハの経験が必要で、リハ実施時にはどちらかが勤務していることが条件になります。
また、少なくとも1名以上の循環器内科または心臓血管外科の医師が急変対応が可能ということになります。10年以上前のことですが、ある地方の厚生局に聞いたときには、外来はすぐに動けるからOKだけど、カテーテルとか手術はすぐに抜けれないからダメといわれました。もちろん、2人でもいい手術(特にカテーテル)に、3人・4人目でエクストラ状態で入っているとかはいいかと思います。要は、実施しているときの心リハ担当医が、CCU当番やカテや手術の当番でなければいいということです。心リハしている現場に医師がいる必要はありません。リハ当番を決めておいて、連絡があれば、すぐに駆けつけられればOKです。
 
心リハ2の医師要件に関しては結構緩くて、心リハを実施する時間に心リハの経験がある医師が勤務していればいいということになっています。循環器内科または心臓血管外科の医師でなくても、心リハの経験がある医師であればいいとなっていますので、かなり緩めです。急変時の対応に関しても、心リハ1のようにその医師が動ける必要があるなどの記載はありません。
 
 
次に、理学療法士及び看護師に関する要件です。
心リハ1では、常勤理学療法士と常勤看護師が、併せて2名以上必要です。理学療法士2名でも、看護師2名でも、1名ずつでもOKです。
ただし、そのうち一人は専従といって、他の脳血管などのリハビリに関して、実施するための登録などはできません。
多いのは、理学療法士か看護師の合わせて1か2名を専従登録して、この人をメインにして心リハを行っていき、原則心リハだけを行うようにします。そのほかの理学療法士や外来・循環器病棟を中心にした看護師を専任の登録にして、専従2名か、規模に応じて専任1名以上で心リハ行っていくことが多いと思います。特に看護職に関しては、もちろん心リハ以外の通常業務は心リハを行っていない時間はできますし、心リハを行っていない日・時間(ここの「・」が「または」か「かつ」かは各厚生局に聞いてください)であれば、他のリハを行うことも可能とされていますが、もちろん一人当たりのリハのできる単位数には上限があり、大抵は心リハだけで上限を迎えることが多いかと思います。
 
専任に関しては、ADL維持向上等体制加算、回復期リハビリテーション病棟入院料及び地域包括ケア病棟入院料を算定する病棟並びに地域包括ケア入院医療管理料を算定する病室を有する病棟の配置従事者との兼任はできませんので、通常の循環器病棟か内科病棟になると思います。ただ、心リハを実施しない時間帯で、他の脳リハなどの疾患別リハビリテーション、障害児(者)リハビリテーション及びがん患者リハビリテーションに従事することは可能となります。
また、医師と同じように、非常勤の理学療法士か看護師で、3日以上で、併せて24時間以上勤務している2人を合算して1名とすることは可能ですが、この場合は、2名以上のうちの1名までしか認められませんので、やはり専従の常勤1名は絶対に必要になります。
 
心リハ2は、常勤の理学療法士や看護師が1名以上専従で勤務ということになります。つまり、医師の要件と合わせると、心リハの経験がある医師(専門はなんでもOK)と専従の理学療法士or看護師が1名いれば、心リハ2は行うことができます。
 
 
次に施設側のスペースに関してです。
これは、「専用の機能訓練室(少なくとも、病院については内法による測定で30平方メートル以上、診療所については内法による測定で20平方メートル以上)を有していること。専用の機能訓練室は、当該療法を実施する時間帯以外の時間帯において、他の用途に使用することは差し支えない。」とされています。このあたりは、施設の図面が必要ですので、病院や診療所の図面で、心リハ用にこの30m2のスペースを取り出すことが必要になります。ちなみに、分割していてもいいようです。(2階で15m2と3階で15m2で合わせて30m2のような感じ)
また、心リハをしていない時間は他のリハに使用してもいいですが、他のリハと同じ時間にする場合には(多くの病院は多少なりとも同時にすると思います)、それぞれのリハに対して申請の面積が必要になります。複数人で同時にいろんなリハビリをするような病院は、別々にとっておいた方がいいと思います。
 
専用の機能訓練室には、緊急時に備えての設備も必要になります。
(ア) : 酸素供給装置​
(イ) : 除細動器​
(ウ) : 心電図モニター装置​
(エ) : トレッドミル又はエルゴメータ​
(オ) : 血圧計​
(カ) : 救急カート​
酸素供給に関しては、酸素ボンベでもOKで、除細動器はAEDでもOKです。
エルゴ―メータは、市販の安いやつでも全然OKで、大事なのは、負荷を選択できて、心電図と血圧を測定しながら安全に行えるかどうかということになります。
また、救急カートに関しては、具体的に規定はありませんが、心肺停止が起こった時に十分に対応できる薬剤と気管挿管などの機材が必要だと思います。
また、施設内に運動負荷試験の装置があることも条件となりますが、施設内の検査室にあればOKということになります。
 
その他の基準としては、
△リハビリテーションに関する記録(医師の指示、運動処方、実施時間、訓練内容、担当者等)は患者ごとに一元的に保管され、常に医療従事者により閲覧が可能であること。
 →電子カルテに一元管理されているといいと思いますし、通常のカルテであれば、心リハ用のカルテを作ったほうが、入院から外来リハへの移行がスムースに行くと思います。
△定期的に担当の多職種が参加するカンファレンスが開催されていること。​
 →私は、常に週に1回のカンファを行っていました。医師と専従の理学療法士ないし看護師は絶対に参加し、できるだけ、栄養士さんや薬剤師さんにも参加してもらうようにお願いしていました。
△届出保険医療機関又は連携する別の保険医療機関(循環器科又は心臓血管外科を標榜するものに限る。以下この項において同じ。)において、緊急手術や、緊急の血管造影検査を行うことができる体制が確保されていること。​
△届出保険医療機関又は連携する別の保険医療機関において、救命救急入院料又は特定集中治療室管理料の届出がされており、当該治療室が心大血管疾患リハビリテーションの実施上生じた患者の緊急事態に使用できること。
 →カテなどができる施設であればいいですが、できない施設であれば、リハをする旨を近隣のカテなどができる高次機能病院に伝えて、施設間で急変時の対応を依頼する必要があると考えますが、この対応をしたことはないので、具体的な手続きに関してはわかりません。すいません。
 
おおよそ以上が心リハの認定になります。
 
常勤の循環器内科または心臓血管外科の医師が1名以上いれば、後は理学療法士や看護師しだいで心リハ1の取得は可能だと思います。また、病院だけでなく診療所でも可能です。
心リハは、最も日常生活に必要な労作(運動)を中心に介入することになりますので、積極的に認定をとって行っていくことが望まれます。
 
また、現時点では、医師も理学療法士も看護師も、リハ学会の認定の指導士などである必要はありません。しかし、学会からは認定指導士であることが望まれるというような発言があります。
 
個人的には、このような動きには反対です。学会は、あくまで学術集会を行ったり、ガイドラインを作ったりする学問的な集まりであり、保険診療に必要な資格認定をおこうのは、既得権益を作るだけで、好ましいことではないと思います。
学会での研修や試験など確認程度のものでしかありません。そのようなものを資格とするのであれば、学会は責任をもって、立ち上げをしようとしている施設に無償で人を派遣し、安全で有効な心リハが行えるような状態になるように導くべきではないでしょうか。