心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版,最終更新2015/1/14, 心リハガイドライン)によると、循環器疾患の方に主に運動療法を行うことで、以下の効果が認められるとされています。
エビデンスレベル A (400例以上の症例を対象とした複数の多施設無作為介入臨床試験で実証された,あるいはメタ解析で実証されたもの)
1.運動耐容能を増加する
2.日常生活同一労作における症状の軽減によりQOLを改善する
3.左室収縮機能およびリモデリングを増悪しない
4.冠動脈事故発生率を減少する
5.虚血性心不全における心不全増悪による入院を減少する
6.冠動脈疾患(coronary artery disease: CAD)および虚血性心不全における生命予後を改善する
7.収縮期血圧を低下する
8.HDLコレステロールの上昇,中性脂肪を低下する
エビデンスレベル B (400例以下の症例を対象とした多施設無作為介入臨床試験,よくデザインされた比較検討試験,大規模コホート試験などでで実証されたもの)
1.同一労作における心拍数と換気量を減少する
2.左室拡張機能を改善する
3.交感神経緊張低下が期待できる
4.冠動脈病変の進行を抑制する
5.CRP,炎症性サイトカインの減少など炎症関連指標を改善する
6.血小板凝集能,血液凝固能を低下する
7.圧受容体反射感受性(baroreflex sensitivity: BRS)を改善する
エビデンスレベルC (無作為介入試験はないが,専門医の意見が一致しているもの)
1.安静時,運動時の総末梢血管抵抗を減少する
2.最大動静脈酸素較差を増加する
3.心筋灌流を改善する
4.冠動脈,末梢動脈血管内皮機能を改善する
5.骨格筋ミトコンドリア密度と酸化酵素の増加,Ⅱ型からⅠ型へ筋線維型を再変換する
上記をざっくりとまとめると、ある強度の運動を一定期間(この辺りは定まっていない)行うと、運動耐容能の改善と虚血性心疾患の発症の原因となるものが改善し、虚血によるイベントが減少するということになると思います。
以前もすこし述べましたが、心機能の明確な改善に関する報告は散見される程度で定まってはおらず、基本的にLVEFが改善するなどの画像診断で分かるような改善はないと考えています。
ガイドラインでも、左室収縮機能を増悪させない、左室拡張機能は改善すると記載されています。論文での拡張評価が本当に拡張機能をみれているかどうかはさておき、運動耐容能の改善は拡張機能と密接に関係しているため、確かに拡張機能は改善していても不思議ではないと考えています。
虚血ではそうでもないかもしれませんが、特に心不全では、活動量が低下していて、本来の心機能であれば、もっと運動ができるのにというような人に対して行うと、1か月程度で同じ運動でも、みるみるBorgや心拍数が低い状態でできるようになり、最大運動量もかなり増えることを実感します。
また、関節の痛みや、他のに整形外科的な疾患がリハビリの制限となることが多々ありますが、この辺りはその部分に負荷をかけないような全身の運動を行っていくような調整はもちろん必要です。