心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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急性心不全の治療(7):ドブタミンとミルリノンの具体的な使用方法とにニフェカラントについても少し

ドブタミンとミルリノンの具体的な使用方法をもう少し具体的にみていきます。

①ドブタミン
 使用量:1.5 or 2γ程度から開始し、5γ程度にとどめる ​
 ドブタミン 3γ程度で循環不全の症状が改善がないときは、ミルリノンの併用を早期から考慮する ​
 (感染などによるショックの時は10γまでの使用を考慮する)
②ミルリノン ​
 腎機能正常であれば、0.1γ程度から使用し、0.05か0.1γ程度ずつ増量し、0.3γ程度までにとどめる。 ​
 腎障害があるときには、目安として、投与量(γ)をクレアチニンの値 ​で割った値が大体の目安となる。

と、先日記載しました。
初回の投与方法に関しても、繰り返しになりますが、まずは、末梢静脈ルートから投与します。薬液の濃さに関しては、できるだけ薄めにして、流量を早めに設定することで、静脈炎による点滴ルートの漏れを予防し、また、安定して薬剤を投与します。

本体ルートを用いてもいいですが、 これをすると全体的に点滴の投与量が意外に多くなったりすることがあるので、そこには注意が必要です。特に、循環不全で利尿が不十分な時に、20ml/Hとかで投与すると結構な負荷になります。
私の使用法では、基本的には2γから開始します。30分から1時間程度様子を見て、倦怠感や低酸素を伴わない呼吸困難などの症状が循環不全からくると診断できていれば、そのあたりの症状(大阪弁で言う、なんか知らんけどしんどい、息すんのもしんどいという症状)を指標にして、症状が改善すれば投与量を固定します。
症状の改善がない時には、他の所見や尿量もみますが、心室性の不整脈が増えていなければ、2.5 or 3γに増量して、再度状態を0.5-1時間程度みます。
​それでも、症状や循環不全の所見に改善がみられないときには、ミルリノンを併用します。
併用時には、基本的に同じ末梢ルートから投与します。いわゆる共流し状態です。(ただし、安定すればすぐにPICCカテーテルに変更しましょう)

ミルリノンは、0.1γ程度から開始します。腎機能が悪い時には、クレアチニンで割ったγ数にします。
例えば、Cr 2であれば0.05γ、Cr 4であれば0.025γです。ミルリノンは腎代謝ですが、腎障害性があるわけではありませんので、心室性の不整脈の出現に注意しつつ、気持ち少なめから開始します。
これも、症状をみながら、0.5-1時間程度の期間でみていきます。
この段階で、ドブタミン3γ、ミルリノン 0.1γですので、これで改善されない低潅流からくる循環不全はかなり重篤です。


一応、ミルリノンを0.05γか0.1γずつ増量して、0.3γまでは増量します。
この段階で、ドブタミン3γ、ミルリノン0.3γです。これで改善されない循環不全は、薬剤投与のみでは無理だと思います。社会的な状況によりますが、心移植を念頭に置きましょう。特に、この段階で心不全が悪くなっている明確な因子があって、それが改善させることができるものがある状態であればいいのですが、これがないときには、本当に心不全を安定化させることは困難と考えてもいいです。また、改善できても、一過性に強心薬を中止することができたとしても、また繰り返します、しかも、短時間で。基本的に繰り返したときの心不全のほうが、重症のことがあり、治療がさらに困難になることは多々あります。(特に基礎となる心疾患の進行が速い場合には要注意)

さて、年齢などの問題で、強心薬でいくしかないときには、ミルリノンは0.3γ程度以上にはあげずに、ドブタミンを5γ程度まで上げていきましょう。
感染などの増悪因子がない時の心不全への強心薬投与としては、これが最大用量だと思っていただいていいと思います。
これ以上上げても、意味がなくはないのですが、頻脈や中期的な治療ではかなり困難になります。
もちろん、感染やなんらかの一時的な増悪因子があって、それを改善させる間だけの一時的な投与であれば、ドブタミンはもっと増やしてもいいと思います。その間に、感染などをコントロールできれば、そのあとに強心薬を減量できる可能性は大いにあります。


強心薬投与で心室性不整脈が増えているときには、どうするかですが、心室性期外収縮は健常者であれば無視してもいいくらいの数(10-20%とか)でも、心不全の急性増悪の時には、それでも不安定化することがあったり、特に短い心室頻拍や持続せず短いながらも心室粗動が出ているときには、一気に急変の可能性もあります。

このような不整脈がある時でも、強心薬の維持や増量が必要な時には抗不整脈薬を併用します。(強心薬を増やして状態を安定させれたらと不整脈が減ることもあります)
お勧めは、ニフェカラントです。これは、Kチャンネル選択的に阻害するため、心機能にほとんど影響を与えません。
特に重症な心不全患者では、一般的なアミオダロンのローディングなどすると一気にショック状態になることが多々ありますが、ニフェカラントであれば、静注してから維持用量持続注射しても、血圧は基本的に下がりませんし、心不全の管理自体には特に影響は与えません。
もちろん、投与中に心電図でQT間隔を確認しながら、用量調整が必要ですが、非常に有効だと思います。
繰り返しますが、アンカロンのローディングは危険ですので、循環不全をきたしているような心不全ではしないことをお勧めします。

また、ここまでしないといけない心不全は集中治療室に準じる場所で治療をしていることと思いますので、こまめにカリウムの値の補正も行います。基本的には、4.8-5.5mEq/Lのレンジを目標に、基本的には5は切らないというような感じでいきます。また、マグネシウムも時には必要ですので。