心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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急性心不全の治療(6):強心薬の具体的な使用

強心薬の具体的な使用の仕方をお話ししていきたいと思います。
 
強心薬として使われているのは、ドブタミン、ミルリノン、オルプリノンドーパミンになるかと思います。
また、強心薬と似て、非なるものが昇圧薬です。これには、ノルアドレナリン、バソプレシン、ドーパミン、アドレナリンがあります。
 
まずは、強心薬と昇圧薬は違うということを認識していただければと思います。
昇圧薬は、末梢血管抵抗を上げることで血圧を維持します。つまり、心臓にとっては後負荷の増加ですので、基本的にはうれしくないことです。しかし、最低限の血圧を保つというのは、腎臓には必要なことですので、血圧が低い時には、昇圧薬が必要になります。
(糸球体のろ過圧は、平均動脈圧と中心静脈圧の差以上にはなりません)
ただし、重症心不全の方では、収縮期血圧70ちょっとでも、尿量が確保されていて、日常生活を送れるような人もいますので、あくまで、昇圧薬を使用するのは、血圧が低くて、それによる何らかの不都合や障害(主に腎臓)があるときということになります。
 
さて、強心薬の使用の順番というのはないのですが、使いやすさでいくと、ドブタミン、ミルリノンの2つだと思います。
オルプリノンは、ミルリノンに準じて使用していただければいいですし、ドーパミンは、昇圧作用がありますので、昇圧させたい時以外の心不全の使用には適しません。特に利尿がコントロールできていない状態(=利尿薬投与で利尿が確保できていない状態)では、左室拡張末期圧があがり、呼吸状態が不安定化することがあります。
 
全体的な注意事項としては、脈が速くなるだけでなく、心室性の不整脈が不安定化することがあるのと、解除されていない(虚血による症状があったり、心電図で虚血性変化が顕在化している)重症な虚血によって心機能が低下しているときに、ドブタミンやドーパミンを投与すると心筋の酸素需要が増大するために虚血が一層不安定化することがあり、虚血症状が悪化し、さらに、全身状態が不安定化することがあります。
虚血で心機能低下があり、PCIやバイパスされていて、主要な血管による虚血の所見がない時には、強心薬の使用は全く問題ありませんが、心電図の変化や虚血による症状があり、虚血が顕在化しながらしているときには、IABPが有効ですので、IABPを導入したうえで、血行再建を行いましょう。
 
 
まず、各薬剤の使用を簡単にみていきます。
(投与量はγという単位になります。γ=μg/kg/min)
 
①ドブタミン
 使用量:1.5 or 2γ程度から開始し、4-5γ程度にとどめる ​
 ドブタミン 3γ程度でLOSの症状が改善がないときは、ミルリノンの併用を早期から考慮する
 (単剤増量よりも併用のほうが有効なことが多い)​
 また、感染などによるショックの時は10γまでの使用を考慮します。 ​
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②ミルリノン ​
 腎機能正常であれば、0.1γ程度から使用し、0.05か0.1γ程度ずつ増量し、0.3γ程度までにとどめる。 ​
 腎障害があるときには、目安として、投与量(γ)をクレアチニンの値で割った値が大体の目安となる。
 
③オルプリノン 
 ミルリノンよりも血管拡張作用が強いとされる。​
 使用はミルリノンと同じで、ミルリノンと同量であれば、2倍の効果あるため、半量を目安にする。 ​
 
④ドーパミン ​
  強心薬としては、ドブタミンに対するアレルギーなどの際に使用する。
急性期に使用するときは、可能な限り血管拡張作用のあるPDEIII阻害薬と併用する。
ショックを伴う心不全の急性期の昇圧目的に使用する際には、かならず十分な量のドブタミンを使用したうえで、最小限を使用する。 ​
 使用量:1.5 or 2γ程度から開始し、4γ程度にとどめる。4γ以上必要な時は、NADを使用する。
 
 基本的に、昇圧するときには、ドーパミンを投与するよりも、ドブタミンとノルアドレナリンを併用し、ドブタミンは循環不全の所見がなくなるような用量に調整し、血圧自体はノルアドレナリンで調整するのがいいとおもいます。
 
 また、投与経路ですが、まずは、薬剤は薄め溶いて末梢のルートから投与し、落ち着いてきたら、できれば、その日のうちに、遅くとも翌日にはPICCカテーテルからの投与を強く推奨します。
 強心薬を投与しても落ち着かなかったら、もっといろいろとしないといけないので、まず、これで落ち着いたとして話を進めたいと思います。
 投与に関してですが、具体的には、速やかに循環不全を改善させるのが優先ですので、末梢静脈から専用のルートをとって、投与を開始します。できれば、薬液は薄めにしてください。薄めて、投与スピードを速くするほうが投与自体は安定させれます。速やかに投与することを優先しつつも、末梢静脈からの投与は、漏れてしまうことがありますので、これをもっとも注意して投与をします。
 一定期間で入れ替えても、やはり、末梢ルートでは漏れてしまう危険があります。漏れてしまうと、入れ替えの間に薬剤の投与が切れてしまいます。これをもっとも避けたいので、できるだけ、速やかにPICCか、CVカテーテルによる安定した投与を行いたいところです。CVカテーテルでは、感染の問題が出てきますので、できればPICCを選択したいところです。