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急性心不全の治療(4):心不全治療における尿中生化学の解釈 (クレアチニン、尿素窒素、尿酸)について

心不全の時に尿化学検査をどのように評価をするかですが、個人的にはいろいろと模索した結果、電解質だけをみればいいのではないかと思うようになりました。
 
ただ、尿中のクレアチニン(urinary Cr, uCr)や尿素窒素(urinary UN, uUN)、尿酸(urinary UA, uUA)に意味がないわけではありません。
 
1日の尿中のクレアチニン排泄量は、個人によって違います。ただし、入院中のような2週間程度で、ほぼ同じ生活強度であれば、1日の尿中のクレアチニン排泄量は、同一の個人で同じです。
さらに、時間当たりの尿中のクレアチニン排泄量もほぼ一定です。
つまり、1日に1g、1000mgのクレアチニンを排泄する人であれば、1時間あたりは、ほぼ40mgと一定なのです。
これは、尿量の推移に使えます。
朝一番の尿中のクレアチニン量を比較すると、ある日の尿中クレアチニンの濃度が80で、翌日が40であれば、純粋に2日目のその時の時間当たりの尿量は、1日目と比べて2倍になっています。
尿道バルーンなどを入れていれば、時間当たりの尿量を調べることができますが、ラシックスなどの利尿薬の投与前と、投与して1-2時間くらいの尿中のクレアチニン濃度を測定して、その比を見ることで、ラシックスの効き具合が尿量という時間当たりの結果よりも早く知ることができます。
ただ、少し待ったら尿量がわかるので、これだけのために、尿生化を見る必要はないと思います。
 
大事なのは、uUNやuUAもuCrと同じように濃度が変化するということです。
これを利用すると、尿量が減った時に、ただの利尿薬不足か、循環不全の悪化なのかの情報の一つとすることができます。
 
循環がよくなろうがわるくなろうが、Crは多少尿細管から分泌されるとはいえ、ほぼその排出量は、1日で決まっています。循環、特に腎循環には影響を受けません。
しかし、uUNや特にuUAは腎循環によって大きな影響を受けます。循環不全になると再吸収が亢進するため、尿中の排泄量が低下します。
 
つまり、前日と比べて尿量が低下した時であったとしても、尿中のクレアチニンと尿素窒素の比、または尿中クレアチニンと尿中尿酸の比が一定であれば、腎循環の悪化はなく、ただの利尿薬不足の可能性があるため、利尿薬を投与を続ければ、利尿は得られます。
しかし、この比が変化、つまり、尿中クレアチニンあたりの尿中の尿素窒素や尿中尿酸の濃度が低下するときには、循環不全を起こしている可能性があります。
 
この時には、2つの可能性があります。すでに引ける水がなくなっているときには、うっ血の治療は終了です。利尿薬を維持容量に減量します。
もう一つは、引けそうな水があるのに、この尿生化学検査で循環不全のサインが出ているときには、強心薬の投与や、利尿の速度を落としてあげる必要があります。
このように治療のマーカーの一つとして利用することができます。
 
それでは、尿中尿素窒素と尿酸のどちらがいいかというと、尿酸です。
両方とも、それぞれにちがう理由で再吸収が亢進しますが、尿酸は近位尿細管で乳酸と交換で再吸収されます。
とまり、腎臓での組織内での乳酸の濃度が上昇している可能性が示唆されるためです。
これは、臨床の私のデータでも、尿酸のほうが少し、さまざまな悪化を予見できる可能性が高いという結果を説明する要素だと考えています。
 
さらに、どの変化すれば優位ととるのかというと、20%を超える変化は優位だと思います。10%以下は、特に何も変化なくても変わりうる値だと思いますし、10-20%はグレイゾーンです。
また、尿検査の異常の後には、血液検査の異常が出てきます。つまり、尿中の排泄量が減った尿素窒素や尿酸が血液検査として変化したときには、尿中の変化はいったんリセットする必要がありますので、血液検査との兼ね合いも重要です。
あくまで、血液検査が変わる前に、尿検査のほうが早く変化するので、この変化をとらえに行っていると思ってください。