心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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急性心不全の治療(1):何はともあれ低潅流、循環不全の有無を評価

心不全の治療をお話ししていこうと思います。
急性心不全の中でも、特に慢性心不全の急性増悪といわれる心不全の治療をイメージして述べていきたいと思います。
 
心不全の中には、劇症型心筋炎や、移植か緩和医療しかないというくらいの重症心不全など非常に重篤な状態のものもありますが、まずは、普段一般的にみる心不全をイメージして、それに対する私個人の治療に対する考えをお話しすることから始めようと思います。
重症の心不全を見るときも10日程度で退院するような心不全でも、基本的な評価や治療に関する考え方は同じだと考えていますし。
 
 
心不全の治療で、一番重要なことは循環不全の有無を評価することです。
一番初めに対応するのは、呼吸。重要なのは循環といったところでしょうか。
これさえ、間違わなければ、あとは呼吸も含めた目の前の症状をとっていくだけです。慢性期治療薬のタイミングや利尿薬の使い方など、より適切な治療というのはあると思いますが、基本的には循環不全さえ評価して治療していけば、大きな問題はないと思います。
 
逆に、低潅流による循環不全を見誤ると、一気に患者さんの容態は悪化します。
 
低潅流所見は以前にも述べましたが、身体所見として取るのは結構難しいです。
 
症状は、例えば、倦怠感や食欲不振が、低潅流による症状であるというのがはっきりすれば、その症状を指標の一つにすることはできますが、症状が低潅流からきていると診断する必要があります。そのためには、やはり客観的な指標が必要になります。
 
循環状態のチェックは、身体所見としては、手の温度、爪の毛細血管再充満時間(CRT, capillary refilling time)をみます。
手の指先の体温が冷たければ、低潅流の循環不全の可能性があります。ただ、もちろん寒い状況では手は冷たいので、そのあたりの環境の影響は考慮する必要があります。
 
私が身体所見で、最も重要視していたのは、爪の毛細血管再充満時間(CRT, capillary refilling time)です。CRTについてですが、これは指の爪をゆっくりと5秒程度押えて、離すと指の爪の色がピンク色に戻りますが、この戻る時間を評価する検査です。
押さえると爪の色がピンク色から白になります。抑える時間は、基本的には5秒ですが、私は10秒にしていました。なんとなく、10秒のほうがよくわかる気がしたからという以上の理由はありません。指を離して、循環不全がなければ1秒程度というよりも、爪の外側からすぐにピンク色が全体に広がります。基準では、これが2秒を下回れば循環不全はないと判断しますが、正直2秒は境界領域だと思います。
 
循環不全があると、かなりゆっくりと白色がピンク色になっていきます、4秒程度かかることもざらです。4秒かかるときには、循環不全です。2秒前後は微妙です。
ちなみに、元から爪が真っ白のこともありますが、重症の循環不全の可能性もあります。ただ白めの人もいますし、押せば多少さらに白くなる人もいます。
さらに、指によってCRTが違うこともあります。中指は2秒で、薬指は3秒とか。そういうひとは、ひとまず、一番循環のいい指でみればいいと思います。左右の人差し指、中指、薬指の計6本で評価することをお勧めします。
 
数を重ねて、低灌流の人もそうでない人もみて、実際に循環不全の人の所見にであって、いろいろみてるうちにわかるようになっていくしかありません。結構経験的な要素が強い身体所見にはなるかもしれません。
 
血圧も重要な要素ですが、血圧100あるから循環不全があるかどうかはわかりません。
収縮期血圧で100を超えていれば、循環不全が合併している可能性は低くはなりますが、ないわけではありません。特に入院時とかは一過性に血圧が普段よりも若干高めに出ているだけのこともありますので、特に評価を慎重にしなければなりません。
来院時血圧100-120mmHgは一番危険な見誤りやすいゾーンです。
 
また、収縮期血圧70台だからといって、循環不全が必ず併存しているわけでもありませんが、可能性はかなり高くはなります。
心源性ショックであれば、CRTは延長しますが、感染性ショックなら短縮することもあります。
 
 
ちなみに、救急外来などで、順番的には循環不全の評価よりも先に行うことがあります。呼吸状態の評価と治療です。
呼吸の評価と治療については、また、後でお話しして、少し、循環不全のあたりの話しを詳しくしていこうと思っています。