心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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TR(7):三尖弁閉鎖不全症に対する外科治療

三尖弁閉鎖不全の治療は、ほとんどが左室の不全を中心とした心不全の影響によるものが多いため、単独の治療というよりは冠動脈バイパス術や左心の弁膜症の手術などの時に同時に行われることがほとんどです。
 
左室系の手術に伴って三尖弁も併せて手術をするかどうかということに関しては、AHAのガイドラインでも述べられています。
 
具体的には、高度の三尖弁閉鎖不全であれば、左心系の手術と同時に手術をすることが積極的に勧められています。(冠動脈バイパス術は含まれていませんが、高度の時には同時に手術をしてもいいと個人的には考えます)
また、軽度や中等度であっても三尖弁輪が拡大しているときや、右心不全の所見があるときには左心系の弁膜症の手術と同時になら手術をすることが勧められています。
ただ、もちろん、右心不全といっても、左心不全に続発して、利尿薬ですっとよくなる程度の体うっ血がある軽度三尖弁閉鎖不全は、弁輪拡大があれば別ですが、右心不全の症状があるからといっても、なんでも手術する必要はないと考えられます。
これらは、左心不全に伴う機能性三尖弁閉鎖不全の時の治療方針となります。
 
次に、左心不全を伴っていないときには、大きく弁自体に異常があるとき(原発性)と右室機能不全(機能性)に伴うときの2つに分けられます。
 
弁自体に異常がある原発性の時には、高度の逆流があって、利尿薬を中心とした内服治療でも心不全による所見があるか、右室機能不全を疑う何らかの所見があれば、手術が勧められるとされています。
私が、以前に経験したのは、これにあたります。
感染性心内膜炎や外傷に続く、原発性の三尖弁閉鎖不全で、左心不全はないものの、右室拡大があり、双方とも形成術となっています。
 
一番難しいのが、右心機能低下による機能性三尖弁閉鎖不全です。
正直、これに関しては手術は現時点では、かなり高度な判断が必要です。
ガイドラインでは、高度な肺高血圧もなく、重症な右心機能低下もない、左心系の術後の患者の高度三尖弁閉鎖不全で、三尖弁閉鎖不全によると考えられる症状が内服でどうしてもコントロールできないときには、単独の三尖弁形成、ないし置換術をしてもいいかもしれないんじゃないかなという程度の記載になっています。
かなり限定的ですが、正直これはガイドラインにのっとるというよりも、ひとつひとつ考えていくしかないと思います。
 
成人先天性心疾患、いわゆるアダコン(adult congenital)領域の患者さんが今後増えていきます。アダコンの場合には、右心機能不全が主病態ということが多く、今後、アダコンに対する何らかの治療判断が増えていきます。
 
また、さまざまなカテーテル治療デバイスがあり、三尖弁の治療用のデバイスも複数あります。そのため、手術リスク自体は今後かなり低下していきます。
 
そうなった時に、何らの心筋症などによる右心機能低下に続発した三尖弁閉鎖不全症に対する治療がどうなっていくのか。
非常に興味深いところではあります。