心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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TR(2):三尖弁の構造

三尖弁の構造は、もちろん名前の通りに3つの弁からなり、中隔尖、前尖、後尖といわれます。
弁は、腱索によって心筋とつながっており、心房側への過剰な動きを制限しています。ただ、これによって心室側への伸展が強くなると腱索によって弁が心室側に引っ張られて、弁が閉じなくなる(tethering)ことが起こりえます。
また、僧帽弁と違って、中隔尖と前尖の中隔尖側にははっきりとした乳頭筋とういものがなく、複数の部位で腱索と心筋がつながっています。
乳頭筋としては、前乳頭筋、後乳頭筋というものがあり後尖と前尖を支えており、前尖と後尖の間には、交連部のような小さな弁尖のような構造物があります。
この乳頭筋と腱索、弁の関係はMRIで非常にきれいにみることができます。

また、心エコーで観察するときに、三尖弁は、常に3尖のうちの2尖がみえているわけですが、どの2尖がみえているか意識するようにしましょう。そうしないと、いざ弁の逸脱や感染性心内膜炎による粥腫がどの弁についているかなどの診断ができなくなります。
三尖弁をみるのは、心尖部からの4腔像、大動脈弁を正面視する短軸像、傍胸骨左室長軸から下にふってみえる右室2腔像の3つが代表的な断面になると思います。
中隔尖が中隔から大動脈の下あたりまでの範囲でついていますので、心尖部4腔像では、中隔側がもちろん中隔尖になります。あと、外側に見えるのは、少し前方気味であれば、前尖で、逆に背側気味に降れば後尖がみえます。また、大動脈弁の短軸レベルでは、大動脈弁側が中隔尖で、外側は前尖になります。右室の2腔像では、前尖と後尖がみられます。
このように三尖弁も常に自分がどの弁とどの弁をみているのかを意識しながら見るようにしましょう。
ちなみに、三尖弁の正面視は時折経食道エコーで描出することがありますが、それで疣贅を3Dエコーで出すと、どのようになっているかきれいにわかることもあります。
 
 
また、他の弁では見られない異常がみられる時があります。右房化右室といわれる所見です。
三尖弁が心尖部寄りの右室にあって、三尖弁輪と僧帽弁輪との高さが全然違うという所見です。
Ebstein奇形といって、三尖弁の前尖だけが本来の三尖弁輪にあって、中隔尖と後尖が心尖部の近くにあるような心奇形もありますが、成人の心エコーをしていて、いきなりこれに出会うということはないと思います(小児期診断がついているはずです)。
ただ、1cm位のずれのレベルで僧帽弁の弁輪との位置がずれていることはあります。特に三尖弁がきっちりと閉鎖していて、肺動脈と右室・右房の位置関係が正常であれば、何の症状もないため、偶然見つけることもあると思います。
特に、弁の閉鎖不全がなければ、何をするということもないので、そういう所見があるということだけ記載すればいいかと思います。