僧帽弁は、今更ですが、2枚の弁で構成されています。ほかの弁はすべて3尖で構成されています。
大動脈弁は3つの尖がほぼ均等な大きさですが、僧帽弁は前尖が大きくて、後尖が少し小さくなっています。
ただ、面積で言えば、前尖のほうが大きいのですが、弁輪の円周を占める割合は後尖のほうが大きくなっています。
いわゆる外科医の視点といわれる、心房の方向から僧帽弁を正面で見ていく図を想像します。この時上方向は大動脈弁です。(googleで、[mitral valve surgical view]で画像検索してみて下さい)
このSurgical viewからみえる僧帽弁と弁輪を時計で例えると、前尖は0時を中心に、おおよそ10時から2時までの間の弁輪から中心を超えた領域を占めています。後尖は、2時から10時までの弁輪の広い領域から伸びています。前尖のほうが大きくて、弁輪にくっついている領域が小さいため大きく動けます。
心エコーの傍胸骨長軸で僧帽弁を見ると、後尖が比較的小さいのに対して、前尖が大きいのがよくわかると思います。
また、左室2腔像で、僧帽弁をみると、前尖が真ん中で上下に動いていて、その両脇に後尖が小さく動いているのがわかると思います。つまり、僧帽弁を時計の3時と9時を通る線できると、両脇は後尖で、真ん中を広く前尖が占めているという形になります。
ちなみに、後尖は時計で行くと4時と8時のあたりに切れ込みが入っていて、3つの部分に分かれています。中心をmiddle(P2)、3時方向をlateral(P1)、9時方向をmedial(P3)といいます。前尖は、わかれてはいないのですが、対岸にある後尖に対応して、それぞれA1-3に分かれます。また、A1とP1、A3とP3の間に、小さい交連(commissure)と言われる部分があります。小さい領域ですが、この交連部が限局的に逸脱することもあります。
つまり、左室2腔像では、真ん中にA2がみえていて、両脇に、P1とP3があるようになっています。そのまま少し上に振っていくと、中心がA1-3となり、両脇が交連部になる画像が得られます。
エコーの各断面で大きく振って、今前尖、後尖のどことどこをみているのか、交連部は大丈夫かと意識ながらみていきましょう。
まとめると、前尖は1/3程度の弁輪をしめていて、弁口自体は7割(?)程度を占めて、特に切れ込みなどはなく1枚の弁となっています。後尖は、弁輪の2/3を占めて、3つの部分に分かれるように切れ込みが入っています。そして、前尖と後尖の間に小さい交連部があります。
弁を引っ張るように、乳頭筋から腱索が弁にくっついていて、弁が心房方向へ行き過ぎてしまうのを防いでいます。腱索は弁の直下では、何本にも分かれていて、多少切れても全体には影響が及ばないようになっていますが、乳頭筋に近くなると収束しているので、乳頭筋に近いレベルで腱索が切れると大変なことになります。
僧帽弁の前尖と後尖は、収縮期に弁が閉じるときに先のほうは結構しっかりと合わさっています。両方の弁が腕で、先のほうの手はしっかりと手のひらを合わせて、合掌している感じです。
いわゆる二次性、機能性僧帽弁閉鎖不全では、この手の合唱がかなり浅くなっているのがわかります。さらに重症になるとひじが開いて、手があわなくなって、両手の指の間が空いているのが確認されることもあります。これはかなり重症です。