vena contracta
僧帽弁の閉鎖不全症の診断として、時折用いられるのがvena contractaです。
ただ、僧帽弁閉鎖不全の時には、カラードプラーエリアでざっくりみて、中等症以上を疑うときには、連続の式(通過血流量からの計算)と、PISA法を用いて、評価することが多いと思いますので、vena contractaを僧帽弁閉鎖不全症で使用することは少ないと思われます。
vena contractaの理論は、ある空間(左室)から狭窄部(僧帽弁閉鎖不全の原因となる孔)を通って、違う空間(左房)へと流体(血液)が流れるときに、狭窄部を通った少し先で流れが収束し、その流れの幅が最小であり、かつ速度が最高となるような部分が出現します。
(視覚的には、googleで[vena contracta]で画像検索してみてください)
このvena contractaの幅には、狭窄部の面積が重要な因子となるため、弁膜症としての重症度である不適切に開いている孔の大きさとして、収縮期の僧帽弁の孔の大きさを評価できるということになります。
つまり、手前の孔が大きければ大きいほど、vena contractaの幅は大きくなります。
ただ、vena contractaもPISA法と同じですが、幅を測るということは、潜在的に幅→流速の断面を測定していることになります。
そのため、孔が円でなければ、どこか一断面で幅を測っても、孔の形が楕円であった時には、実際に測った幅が、短径であったか、長径であったかにより断面積は大きく変わってきます。そのため、あくまで僧帽弁の収縮期の孔が円形かそれに近いということが前提となります。
大動脈弁閉鎖不全であれば、左室の流出路を短軸で観察すると段面積当たりの逆流のカラーの面積を測定すると、vena contractaの断面としての評価できますが(これも流出路と逆流ドプラーが平行になっていないといけないという制約はありますが)し、少なくとも逆流の断面が円に近いか楕円かの評価は可能です。
僧帽弁ではこのような評価は困難ですので、あまりvena contracta自体は使用しないことがほとんどです。
測定するに際しては、僧帽弁逆流のカラードプラーで吸い込み血流から逆流のカラーが弁を中心になるように描出して、弁の2㎜程度心房側の逆流ジェットが最もくびれている場所で幅を測定します。
本来であれば、どの断面で測定しても同じ幅になるのが理想ですが、収縮期の僧帽弁の孔が楕円などの形になっていると、断面によって幅が全く違うということになりますので、注意してください。
また、vena contractaの考え方自体は、非常に重要です。
PISA法でも、実際の計算で求めている有効弁口面積は、この収束部位ですし、大動脈弁狭窄などでもこの原理は重要です。
vena contracta自体は、考え方とイメージだけつかんで、僧帽弁閉鎖不全症の評価にはあまり使用しないと考えいていただければよいかと思います。