心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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心エコー:6.心尖部からの観察

短軸像をしっかりと各肋間ごとにプローブをゆっくりと動かして心尖部短軸まで観察したら、そのまま心尖部からの観察です。

心尖部を確認したら、そろそろエコーのゼリーがなくなってきていると思いますので、一度エコーゼリーを塗りなおしましょう。

さらに、心尖部からの観察は完全に横臥位になっていると普通のベッドでは観察できません。

心エコー用の、心尖部観察するときにベッドの一部がはずれる(下がる)ようになっているベットであれば、そのまま観察を続けましょう。

普通のベットで観察しているときには、右の半身に枕を入れるくらいの緩い横臥位にして観察していきましょう。

 

さて、心尖部であることの確認は、心尖部が動かないことです。心臓の拍動のたびに心尖部が動いてみえたりみえなかったりするときには、心尖部より少し心基部気味で観察しています。肺がかぶったりしてどうしても描出できないとき以外は、しっかりと心尖部が固定されているところまで下げて観察しましょう。

 

心尖部からの観察は、4つの断面で行います。

4腔像(4ch,4chamber view)、5腔像(5ch)、2腔像(2ch)、3腔像(3ch)です。

 

まず、4chからです。この断面では、左房・左室、右室・右房とバランスよく描出します。左室流出路から大動脈弁が描出されると振りすぎですので、しっかりと、4つの心房心室の交点がでるようにしましょう。(どうしても描出できない人はもちろんいますが)

この像では、全体の動き、僧帽弁、三尖弁の確認をします。他でも計測していますが、三尖弁の逆流速度は必ず計測しましょう。また、左室流入血流波形(3chでも測定)や、組織ドプラ―、肺静脈の流入血流の測定を行う断面でもあります。

心房と心室が長軸方向に同軸上できれいに観察できればいいですが、ずれることが多いので、心室・心房ともに、計測を行うときには、弁輪を中心にして、それぞれの腔と弁輪がきれいに見えるように調整してから測定しましょう。特に心房は、心尖部からずれたほうが長軸方向にきれいに見えることが多いので、容積の計測時などは心尖部にこだわらずに、弁輪をベースにした長軸が最大になるようにしっかりと描出しましょう。

左室流入血流や組織ドプラ―、各弁膜症は別項目でお話しします。

この断面で稀ではあるが、ないことはないのが、Epstein奇形です。全体的な疾患概要は別項目として、この疾患は、右心系の異常のため、僧帽弁輪より三尖弁輪の弁輪のほうが心尖部によっているのが特徴のひとつです。多少、弁輪の心尖部方向への高さが違う人は結構います。気を付けてみていきましょう。

 

少しずらして、5chをみます。この断面で、左室流出路血流の時間速度積分(VTI)の測定ができますし、大動脈弁閉鎖不全などの大動脈から左室流出路、左室の連続性に異常のあるひとの観察ができます。S状中隔の人は、4chをどう頑張ってもうまくだせず、5chになる人もいます。そういう人は、個別に見たい部位を適切な描出でみていきましょう。

 

次に2chです。この断面で重要なのは、心尖部の観察です。心尖部に関しては、もちろんすべての像で確認しますが、この像による観察がもっとも重要です。心室瘤や血栓などないかしっかり観察しましょう。ひとによっては少しプローブをずらすほうが見やすい人もいます。

この断面と4chの断面を組み合わせて、左室や左房の3次元的な体積を求めます。これをSimpson法といいます。

個人的に、このSimpson法で左室の拡張期末期・収縮期末期の内腔のトレースは、2chの収縮期から行うほうがやりやすいと思っています。2ch収縮期→拡張期、次に4chの収縮期→拡張期です。また、心房に関しても、2chのほうからトレースしたほうが、やりやすいように思います。いろいろと、自分のやりやすい、正確に描出できるやり方を試してみて下さい。

僧帽弁に関しても、閉鎖不全がある人は細かく動かしてしっかりどの弁のどのような異常によるか、しっかりと確認しましょう。

 

最期に、3chです。

左室と左房、大動脈弁を中心にみます。

基本的には、傍胸骨長軸像と同じですが、しっかりつ心尖部まで見ることと、左室流出路の血流や左室流入血流の測定を行います。

この画像の観察が終えると、ひとまず一般的な観察は終わりです。

 

他に、追加するとしたら、右の傍胸骨の結構頭側から大動脈弁を見下ろす感じでみる断面です。石灰化が強く、心尖部から大動脈狭窄の通過血流の最高速度を測定できないときには、右の頭側から見下ろす感じでみてみましょう。

あと、ごくたまに右側臥位にしたほうが見えやすいときもあります。どうしてもみえん。というときには試してみましょう。