心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心エコー:5.左室短軸

大動脈弁の正面視レベルを観察したら、そのまま僧帽弁の短軸の観察に移ります。
僧帽弁の観察は、しばしば低めの肋間から行っていて、弁が閉まったときの短軸がみられないことがみうけられます。同じことを繰り返しますが、常に上のほうから、しっかりとプローブを動かして、観察しましょう。最初は、基本となる断面を出すことに必死で、また、計測するとこに集中してしまいますが、大事なのはしっかりと全体を観察することです。常にプローブを動かして、観察しましょう。その観察の中で、基本となる断面は出てきますから、ゆっくりと観察したのちに基本断面で計測したり、検査記録として、動画ないし静止画用に保存しましょう。
 
長軸で、僧帽弁に関する異常は確認していますので、閉鎖不全も狭窄もない人に関しては、そこまで必死にみなくても大丈夫です。
狭窄の時には、弁口面積の計測と弁の癒着の状況をチェックします。最終的には、カテーテルによる治療の適応となるかどうかのスコアリングもできるようになれれば、完璧です。(私は自信がありません)
また、閉鎖不全症では、弁自体の異常による場合には、しっかりとどの弁のどのような異常によって逆流が生じているかをしっかりとBモードとカラーを用いて、診断しましょう。また、詳細は各弁膜症の疾患でお話ししたいと思います。
 
また、大動脈弁閉鎖不全の時の逆流は短軸で、大動脈弁から心尖部までふっていくと、ある程度追いかけることができます。長軸や心尖部からみると逆流のカラードプラ―は流入血流と途中で合流するため、現時点では大動脈弁逆流を到達距離で判定することはしませんが、短軸であれば、合流するあたりまでは、大動脈弁逆流のカラーを追うことができます。特に、真ん中からまっすぐに逆流する大動脈弁逆流に関しては、そのカラーの幅と、面積が重症度評価の一指標となりますので、重要です。
 
左室の動きに関しては、肋間ごとに大きく上下に振って、しっかりと心尖部までみていきます。最終的に心尖部の短軸までしっかりとみたら、次は、心尖部からの像になります。
 
さて、左室の短軸像は、左室の収縮をみる像といえます。全体的な収縮もそうですが、壁運動が低下している場所があるかどうかをしっかりみます。また、心室中隔の状態をみて、右室と左室の圧の相対的な変化をみます。
 
まずは、左室が拡張期も収縮期もしっかりと円形になっていることを確認します。そのうえで、心筋の厚みの変化をみます。参考としては、心筋が30%以上厚くなると正常です。10-30%になれば、収縮低下となり、10%以下であれば、高度な収縮低下、または、無収縮となります。さらに、心筋梗塞や拡張相肥大型心筋症などで、奇異性収縮といって、収縮期に逆方向(外側)へ動くこともあります。
心室瘤はずっと外側へ膨らんでいるもので、奇異性収縮は、拡張期には、通常の位置に戻る(円形になる)が、収縮期にぶぅっと外側へ動くものをいう感じです。奇異性運動しているものも、瘤といっても間違いではないように思いますが、臨床的な背景は異なります。
 
また、短軸には、各学界からどのように部位別にみていくかという16分類とか17分類といった分類がありますが、大事なのは、冠動脈が閉塞したときに、説明しうる領域かどうか、それとも冠動脈の閉塞では説明できない領域かどうかの意識を持つことです。
 
急性心筋梗塞の時というよりも、心電図などの検査で異常が見つかって、心エコーなどの検査をした時に、冠動脈の異常で説明うる壁運動低下なのか、それとも冠動脈の異常では説明できない異常なのかという視点がじゅうようということですが、そのため、前下行枝が閉塞したら、この領域というように、冠動脈とそれが支配する領域がどこかを意識してください。
 
私の分類は、心臓を基部(basal)・乳頭部(中間部,mid)・心尖部領域(apical)・心尖部(apex)にわけて、それぞれを基部(basal)から心尖部領域(apical)を前壁(anterior)、前壁中隔(anteroseptor)、側壁(lateral)、後壁(posterior)、下壁(inferior)、下壁中隔(inferoseptor)の6つに分けた18領域に、心尖部を加えて19領域がいいかとおもいます。17とか16領域では、apicalを4つに分けていますが、逆にややこしいように思います。特に、最終の所見は日本語で書くことが多いので、3つと6つの組み合わせと心尖部にわけて、書くほうが書きやすいように思います(個人的な感想です)
 
 
心室中隔の動きは、左室と右室の圧の相対的な上下をみれます。
肺高血圧になると収縮期に右室圧よりも左室圧のほうが高いので、右室が円形に近くになり、収縮期に心室中隔が左室を押し込み、左室は円形にならずにへこんだ形になり、右室が円形に近い形になります。
また、右室自体が悪くなるような疾患であれば、右室の収縮気圧は上がらず、拡張末期圧があがるため、拡張期に右室が円形に近づくため、拡張期に心室中隔は左室に対して押し込み、へこんだ形になります。
このように収縮期か拡張期のどちらに左室がへこむかを見ることで、右室と左室の圧の相対的な変化みることができます。
また、必要であれば、バルサルバ負荷などをかけて、揺さぶってみましょう。正常に見えても、負荷時に異常を示すこともあります。