心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心エコー:4.短軸像(大動脈弁レベル)

傍胸骨長軸で左室・右室、弁を観察したら、次は、短軸を観察していきます。
 
基本断面は大動脈弁が正面視できる像ということになります。
正面視できているかどうかは、大動脈弁の弁輪がほぼ円にみえて、かつ3つの弁が均等にみえている像ということになります。いつも、3つの弁をしっかりとだす意識を持っていると、大動脈弁狭窄の時に、弁尖の枚数の確認を怠ったりということがなくなります。
(大動脈弁の弁数は、正常3尖、たまに2尖、極々たまに4尖、人生に一度みるかどうか、いやみることはない1尖です。私は4尖弁までは、みたことありますが、1尖弁は私の師匠がみたことがあるというくらいで、他に見たことのある人すら知りません。)
 
何度も繰り返しになりますが、あくまで基本的な断面が大動脈弁が正面視ということですので、これもプローブをゆっくりと大きく動かしながら、Bモードで観察可能な範囲をしっかりとみるということが重要です。上行大動脈や左室の流出路、肺動脈弁付近、右房や右室や心房中隔、また、カラーも入れて、中隔欠損や動脈から右心系へのシャント(心室中隔欠損や大動脈弁の弁腹穿孔など)がないかゆっくりと観察してください。また、常に心嚢液と心膜は意識してください。
 
 
まず、大動脈弁からみていきます。大動脈弁輪や上行大動脈の拡張の有無に関しては、すでに長軸像でみていると思いますので、それを踏まえて弁と弁輪を観察していきます。弁自体は、まず弁尖の確認、石灰化、開放制限の有無をみます。長軸で、ある程度狭窄や閉鎖不全の状態はチェックしていると思いますので、それを確認する感じです。詳細は、各弁膜症の項目で述べます。特に、重症度とともに、弁膜症の原因の確認は重要です。
 
上行大動脈に関しては、もし慢性的な解離があれば、長軸と短軸でしっかりと観察します。血管径はCTのほうがわかりますが、しっかり測定し、特にエコーではカラードプラ―での解離の流入と流出の場所を確認します。造影CTで血流の有無はわかりますが、これはエコーにしかできないことです。
カラードプラ―で、血流をみれる、その血流の速度をはかれるというのがエコーの最大の強みです。
 
次に、先ほど少し話したように、しっかりつ大動脈付近から右心系への短絡がないかどうかを観察します。大動脈弁を中心に、カラーを当てて全心周期で血流があるかどうかを見ていきます。時折、心室中隔欠損症(VSD)で、空いた穴に大動脈弁の右冠尖がはまり込み、ポーチ上に見えることがあります。しっかりとはまっていて、しかも大動脈弁逆流が起こっていないときには、この所見は、意識してみないと見逃すことがあります。通常は、弁がはまり込んでしまうために、弁の閉鎖不全がおこり、大動脈弁逆流となることが多く、大動脈弁閉鎖不全症の原因として重要です。
 
次、心房中隔を観察して、中隔欠損や心房中隔瘤、心臓腫瘍などがないかしっかり見ていきます。
かなりレアな疾患ですが、三心房心という右房が隔壁で2つに分かれているような疾患もありますので、注意しましょう。
 
右房をみて、三尖弁をみます。弁を見るときは、常に、まず弁輪の大きさ、弁自体の異常の有無、弁の動きをしっかりと観察します。
この像で三尖弁の逆流と、逆流の連続波ドプラ―から肺動脈収縮期血圧の評価を行います。
あまりないですが、もちろん狭窄などないか確認してください。
 
次いで、右心を評価します。この断面で、右室のサイズを測定することもあります。特に、大きさと動きは重要です。大きさは、収縮機能の低下を示唆します。
また、ペースメーカの植え込みの人に関しては、この像がしっかりと見えます。
普段から見る癖をつけましょう。いざ、ペースメーカ関連の感染性心内膜炎を疑ったときに、普段からみておかないと評価できません。
 
 
最期に、肺動脈弁の近辺を観察します。弁自体は、薄いのであまり見えません。
右室流出路から肺動脈弁の分岐部までを観察します。
大きさと、カラーを入れて、狭窄や閉鎖不全の状態を評価します。基本的にはこの断面で、右室流出路の通過血流からの心拍出量の推定と、肺動脈楔入圧の推定を行います。
また、時折、大動脈管依存があると、肺動脈へ全心周期に流れ込む血流をカラードプラ―で認めます。しっかりと肺動脈の分岐くらいまで観察します。もちろん、みえない人は仕方ないですが。