心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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心エコー:2.傍胸骨左室長軸像(2.心房と弁の観察)

傍胸骨左縁から左室長軸を観察したら、次は、心房を観察して、最後に弁をみます。

心房は、この断面で計測することが一般的ですので、収縮期で左房がもっとも大きくなった時に、きっちりとみえるように描出して、左房径を測定しましょう。
左房の大きさは非常に重要です。
左房の大きさは、左房内圧の平均値を表していると考えていいと思います。
つまり、安静時に左房圧が高い人はもちろん、少しの労作でもすぐに左房圧が上がって、1日のトータルの左房圧が高い人も左房は大きくなると考えています。イメージとしては、1日の左房圧の積分値が左房圧であるという感じです。
ただ、この断面で測定できる左房径は、目安にはなりますが、場合によっては、この左房径が正常でも、左房容積が拡大していることはよくありますので、あくまで目安として測定し、あとは心尖部からの断面でしっかりと左房の大きさを評価することが重要です。


この断面でみる左室に次いで重要なのが、弁です。
僧帽弁と大動脈弁については、この断面と短軸の断面で評価できます。
まずは、カラーをつけずにしっかりと弁自体を観察することが重要です。
私のエコーの2番目の師匠にあたる先生の名言が、「弁膜症をカラーで診断するのは素人やで。」でした。つまり、しっかりつBモードで、弁の性状や動き、動く範囲、弁輪などをみれば弁膜症があるかどうかはわかります。

まず、大動脈弁とその周りの基部の大きさなどをしっかりと観察してください。
重要なのは、プローブを動かして、弁全体をみることです。弁を見る時には、弁を中心にプローブを動かします。基本断面だけ固定してで、動きをみていては絶対に見逃す異常が出てきます。
弁輪は拡大していないか、きちんと拡張期にあわさっていそうか、弁は石灰化していないか、可動制限はないかをみます。それらをみて、逆流があるかどうかをしっかりと予測してからカラーをいれましょう。すると変異している逆流などもみのがさずにしっかりと評価できるようになります。


僧帽弁も同じです。
弁輪をみて、弁自体をみて、弁の閉鎖時と開放時の形態に異常はないか、動きに制限はないかをみます。
特に、最近は僧帽弁閉鎖不全が多く、狭窄症をみる機会が減っているためか、若い先生や技師さんで、僧帽弁の開放制限を見逃すことが多いように思います。確かに、数としては非常に少ないですが、例えば僧帽弁狭窄症とまではいかないが、開放が何らかの理由で制限されていることもあります。閉鎖時だけでなく、開放時の動きも注意してみてください。
十分逆流と狭窄の予測を立ててから、カラーを入れます。

私は、一度僧帽弁閉鎖不全を見逃したことがあります。感染性心内膜炎の治癒後で、弁に穴が開いていて、その穴から逆流があり、後で見直すと、この断面で、後壁側に偏移して逆流している動画が残っていました。やっているときには、まったく気付いていませんでした。
ということもあるので、カラーはカラーでしっかりとみてください。

それぞれの弁膜症については、別項目の弁膜症でお話ししたいと思います。