心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて (47-1:胸部レントゲン、心陰影)

心不全の診断を行う際に最も重要なものの一つは、胸部レントゲンです。

 
症状の経過や身体所見から心不全を疑ったときは、レントゲンは非常に有用な検査となります。
 
心不全の時に、主に見るのは、心と肺です。
 
心臓は、まず心不全が疑わしいかどうかを心陰影が拡大しているかどうかで評価できますし、心不全が安定しているとき(代償状態)と不安定化しているとき(非代償状態)の違いもあります。
 
心臓は、ぱっとみの大きさと形が大事です。心臓が小さければ、心不全の可能性は低くなります。ただ、大動脈弁狭窄、肥大型心筋症や拘束型心筋症、それに類似する疾患の時には、あまり大きくならないこともあります。
心臓が拡大しているかどうかの指標は、心胸郭比(Cardio Thoracic ratio;CTR)と指標を使います。心胸郭比は水平方向に、胸郭の最も広いところの肋骨の内側の距離を分母にして、心臓の最も大きいところの距離を分子にして割り算をした値です。50%より大きければ、心拡大といわれます。
 
心臓が大きくなくても、レントゲンを撮影する姿勢や肥満の度合いで、心胸郭比が大きな値になることがあります。
臥位の時には心臓は水平方向に寝てしまいますし、座位や肥満では、腹部からの圧迫により横隔膜が上がってしまうと心臓が横方向に寝てしまうので、心臓の大きさは普通でも心拡大となることがあります。
また、もともと心臓が普通よりも横向きになっている場合など、心臓の軸の向きによっても心拡大となることがあるので、この辺りは注意が必要です。
 
 
一般的に、レントゲンで心陰影が拡大する多くの場合は、心房や右心室の拡大によることが多いです。
左心室は、拡張型心筋症などでもちろん拡大しますが、心不全になると心房に負荷が慢性的にかかってそれにより拡大することが多いので、心房の拡大がみられ、それによる心拡大がおこります。
肥大型心筋症や拘束型心筋症でも、特に心不全となるような場合には、心房はほぼ拡大していますので、それによる心拡大がみられる可能性があります。
(拘束型心筋症や心膜炎を疑うもっとも有効なもののひとつが両心房の拡大です)
 
また、左心室と違って心房や右心室は、いわゆる心不全の急性増悪といって、慢性的な心不全に何らかの負荷がかかって不安定な状態(非代償状態)になると、一時的に拡大します。
心不全を代償化させて、安定させると、右心系の圧が下がりますので、心陰影は縮小することになります。
(理屈的には左室も縮小するが、レントゲンや心エコーできっちりと評価できるほどの変化はしないことが多い)
 
これは、肺うっ血や肺水腫などにはならない程度に心臓の負荷が若干増加し、右心系の圧が上がっていることを評価できるという点で有用です。
入院中でも有用ですが、特に安定期である外来診療では重要です。
心不全は通常は右心系の圧上昇が心不全の不安定化の初期に起こっていることが多いため、不安定化を早期にとらえられます。
(これにBNPなどを併せるとさらによいです)
 
レントゲンでの心胸郭比(CTR)が、まったくの個人的な見解ですが、経験的には3%以上変化していると、有意な所見のような気がします。
CTRが3%縮小していると何かが良くなっていて心臓が縮小してきているとか、3%以上拡大している、心臓が一時的に悪くなっているか、心房細動などの不整脈で心房機能が低下しているなどが疑われます。
 
また、心陰影の拡大だけではなく、まん丸く心臓が拡大するときがあります。これは超要注意で、心タンポナーデになっている可能性があります。
すぐにエコー(どうしても無理ならCTでも可)を当ててチェックしましょう。
 
他にも、初回時には、大動脈などの見える範囲での血管の拡大がないか、サルコイドーシスを疑うような肺門のリンパ節腫脹がないかなどもチェックすることは重要です。