心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(36:自己免疫性疾患とホルモン異常)

自己免疫性疾患や内分泌異常に伴う心不全は、ファブリー病やサルコイドーシスなどと違って、心臓だけに起こるタイプはあまりないように思います。

そのため、他の全身の症状をしっかりと検査して、自己抗体といわれる、自分の組織に対する抗体があるかどうかを調べれば、自己免疫性疾患の有無は評価できるのではないかと考えています。自己免疫性疾患が原因と思われる心不全としては経験はありませんが、自己免疫性疾患に伴う漿膜炎の一環として心膜炎、心嚢液の貯留や、結構多いのは自己免疫性疾患による肺高血圧とそれに伴う心不全です。
 
また、内分泌異常に伴う心不全も、心臓だけに起こるというよりは、全身になんらかのホルモン異常による症状があることが前提だと思います。ホルモンの異常が心臓だけに作用して、他の症状は出さずに心臓だけに異常所見が出るということは、考えにくいかと思います。ただ、やはり、初回の心不全の場合には、甲状腺ホルモンだけでなく、成長ホルモンと副腎系のホルモンをはかることは重要であろうと思います。
 
この時に、心不全であるだけで、甲状腺刺激ホルモン(TSH)は5-8程度の軽度高値にはなりますし、副腎ホルモンのアドレナリンやノルアドレナリンも心不全であるだけで上昇しますので、軽度の上昇ではなくそれぞれの診断ガイドラインに従うことが重要ですが、心不全だけで多少は上昇するということを知っておく重要です。
甲状腺ホルモンに関しては、甲状腺ホルモンが急激に上昇する甲状腺クリーゼという病態の時には、急性心不全となりますが、この時には、急性心不全の治療を行っても改善しません。甲状腺専門医と共同で、ヨードの内服を中心に、甲状腺ホルモンを押さえながら全身状態を安定させる必要があります。ベーダ遮断薬も慎重に使用し、心エコーや心臓カテーテルによる圧データ、全身状態をみながら少しずつ使用することが重要です。これ以外の時には、慢性的な影響として、甲状腺機能低下や亢進の全身所見がないかと、甲状腺ホルモンに関しては、心房細動の時も含めて、しっかりと血液検査で評価することは重要だと思いますので、全例行う方向でよいかと思います。
 
成長ホルモン亢進による心不全は、体の大きい人の心不全を見た時に疑う必要があります。成長ホルモンによる心不全に関しては、十分な数の報告はありませんが、実際に経験することはあり、早期であれば、ホルモン自体に対する治療があり、心不全を予防、または、初期であれば心不全を根治することも可能です。診断に関しては、なかなか循環器医では困難ですので、成長ホルモンだけではなく、成長ホルモンの分泌を促す成長ホルモン刺激因子や、成長ホルモンが肝臓で分泌させる実質的に成長ホルモン系の効果を及ぼすIGF-1というホルモンの値などを総合的に判断する必要があります。まず、疑ったら専門医に相談するというのが重要であと思います。
成長ホルモン亢進による心不全の特徴としては、私の個人的な経験では、心臓のすべての心房心室がバランスよく大きいということでした。また、心不全自体で、成長因子の軽度の低下はしばしばみられますが、このような患者さんに対して、現在成長ホルモンを投与することで、治療効果があるかどうかが検討されています。現在、有効そうだといういくつかの報告はありますが、今後、しっかりとした試験が行われる予定であるとのことです。