心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

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心不全のすべて(34:心ファブリー病)

Fabry(ファブリー)病は、稀ではありますが、肥大心の数%程度の割合でみられる可能性もあるといわれています。

 

以前は、非常にまれと考えられていましたが、現在は一定数みられ、また、酵素補充療法という治療があるため、必ず鑑別に入れなければいけません。

 

ファブリー病は、X染色体という性染色体にあるαガラクトシダーゼという酵素が欠損することで発症する病気です。

αガラクトシダーゼが欠損すると、この酵素によって分解されるグロボトリアオシルセラミドを始めとする糖脂質が体の組織に蓄積します。その蓄積によってさまざまな臓器障害が起こる病気です。

一般的には、神経系や皮膚、腎、心臓に蓄積して、四肢痛、低汗症、皮膚の被角血管腫、腎不全、心肥大などの症状があり、腎不全が進行して診断されることも多いとのことです。

 

ただ、心ファブリー病といって、心臓にしか糖脂質が蓄積しないことがあり、これは循環器医にしか診断する機会はありません。

X染色体は、性染色体です。男性はXYですので、母親のX染色体に異常がある時には、母親に症状はなくても、息子は発症します。

子供が女の子の場合には、母親のX染色体のどちらかが異常であっても、父親のX染色体は正常なはずですので(これが異常だと父親が発症しているはず)、酵素欠損にはならず発症しないはずと考えられていましたが、X染色体のこのαガラクトシダーゼの発現は、思ったよりも気まぐれで、父親からのX染色体のαガラクトシダーゼの発現が弱いと、ファブリー病を発症します。

つまり、男性であれば、血中白血球などのαガラクトシダーゼを測定すれば、10%以下とかなり低値なので、すぐに診断できますが、女性の場合には、30%とか60%とか低めの値をとります。

そのため、男性で肥大心があれば、血液検査ですぐに診断できますが、女性の場合には、酵素活性が低めであれば疑われますが、糖脂質が心臓に沈着していることを証明しなければなりませんので、心筋生検が必要です。

 

治療の酵素補充療法に関しては、もともと患者さんが少なく、治療としての日も浅く、初期の人に関する数年単位の治療効果は有効と報告されていますが、今後さまざまな報告がなされると思います。