心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(33:心アミロイド―シス)

心不全となる原因として、アミロイドーシスは比較的有名です。

 
アミロイドーシスは、本来心臓にないアミロイドという線維性のたんぱくが心臓の間質に沈着することから始まります。アミロイド自体は31種類あるようです。
サルコイドーシスと違うところは、心臓が付随して障害を受けていて、疾患の根元は別のところにあるということです。
 
アミロイドーシス自体は、いくつかのタイプに分かれ、原因によって心アミロイドーシスの進行の度合いも違ってきます。
アミロイドーシスも種類によっては、厚生労働省によって難病に指定されています。
 
アミロイドの原因として、以前は血液透析や関節リウマチによって、ある種のアミロイドが増加・沈着することによるアミロイドーシスが良くみられていたのですが、最近は、透析の進歩や、関節リウマチの早期診断方法の確立、治療法の進歩によって、これらは減少しているようです。
 
現在主にみるのは、潜在的なものも含めると圧倒的に老人性全身性アミロイドーシスであろうと思います。また、見逃してはいけないのは、血液系の悪性腫瘍に伴うアミロイドーシスです。
老人性のアミロイドーシスは、比較的緩徐に進行しますが、血液系の悪性腫瘍などに伴う免疫性アミロイドーシスは、心アミロイドーシスとしての進行が速いです。
 
私は見たことはありませんが、家族性アミロイドーシスは、老人性と同じトランスサイレチンというたんぱくを前駆体したアミロイドが沈着しますが、現在これに対する治療薬が存在するため、家族性心アミロイドーシスもさらに減ることが予想されます。
 
アミロイド―シスの心不全の特徴は、アミロイドが沈着しますので、エコーなどでみる心筋がぶ厚くなります。また、両室ともにぶ厚くなるのも特徴です。心筋がぶ厚くなるので、拡張できません。
また、心房にも沈着し、さらに拡張性が著しく障害され、心房の負荷が増加し、心房細動がよくみられます。
拡張できないので、当初の心不全の起こり方としては、心房圧上昇によるうっ血症状が中心です。
老人性の場合には、うっ血症状が中心の心不全急性増悪を繰り返すことが多いです。
 
心筋自体の収縮性は当初は保たれていると思いますが、拡張できないので、すこし収縮性が低下するだけで、低灌流状態となる可能性があります。
 
アミロイド―シスは全身に影響を及ぼす疾患であり、特に末梢神経にも障害を及ぼします。自律神経系である交感神経や副交感神経にも影響を及ぼすため、動静脈の適切な管理ができなくなり、立ちくらみなどの症状が出やすくなります。
このような状態で、心臓の収縮機能も低下し、低灌流状態となると、立ち上がるだけで心肺停止となるようなことも起きます。
しかも、免疫性アミロイド―シスでは、進行も早く、心不全の症状が出始めて、1-2ヶ月でこのような状態になることもあります。
そのために、心筋のぶ厚い心不全をみたら、そうでなくても、アミロイド―シスというのは、かならず原因として考えておかなければなりません。
低灌流状態となるとかなり厳しくなりますが、そのような状態でも、できればそのようになる前に、血液系の疾患の治療を行うことが重要です。
 
心アミロイド―シスは、比較的安全に心筋生検が行え、そのまま原因の診断もできますが、最近はMRIで、mappingという特殊な撮影を行えば、診断可能だということです。もちろん、腎臓が良ければ、遅延造影でも特徴的な内膜の造影を認めます。
 
心エコーでは、はっきりつこれはおかしいと思うことが多いですが、たぶん微妙なものはエコーでは肥大している以外わからないと思ったほうがいいと思います。
 
他の検査というよりも、心筋生検と、血液系の原疾患の除外・診断を急ぐ方がいいと思います。