心不全を中心とした循環器疾患に関する単なるブログ

心不全について私が知る・思うすべてのこと

心不全のすべて(29:運動耐容能の指標-1, NYHAとMets)

 
心不全の患者の重症度評価として、どれだけの運動をすることができるか(運動耐容能)というのは、非常に重要です。
運動耐容能の評価には、日常生活での話を聴くだけでいいものから、医師が付き添いで行う運動負荷検査までいくつかあります。
 
①NYHA(New York Heart Association) class分類
日本の循環器診療で、NYHAといえばこれを指します。
患者さんが日常生活の中のどの程度の活動で、息切れなどを訴えるかどうかを評価したものになります。
医師の間での表現としては、NYHAはIですとか、IVですとかというように使用します。
その患者さんの予後などと関係するのは、その時点で最大限の治療を行って症状が、その患者さんとしては最も安定している状態での症状となります。
また、例えば、「退院時から半年程度はNYHAII程度で経過も、下腿の浮腫の出現とともにNYHA IIIに移行し、昨晩起坐呼吸となり緊急入院となりました」などと、症状の経過を表現するときにも使用できて非常に便利な指標です。
運動負荷は、安定している状態でないと行なえないので、その点でNYHA分類はかなりおおざっぱですが、有用な指標です。
 
NYHAでの症状は、倦怠感、呼吸困難、息切れ、胸痛です。
ざっくりつというと、
NYHA Iは何をしても症状がない
NYHA IIは、日常生活の中でも、階段を上るとか、重い荷物を持って歩くなど負担の大きい労作で症状が出ます。家の中の家事や歩く程度では症状はありません。
NYHA IIIはとばして、NYHA IVは安静時でも症状がある状態です。
もどって、NYHA IIIは、IIとIVの間です。何らかの日常生活で症状が出る状態です。結構NYHA IIIは広いので、IIIの中でも軽めのIIIsと重めのIIImに分けられます。
 
以下は、正式な表現になります。
 
NYHA機能分類:
NYHA I : 心疾患はあるが身体活動に制限はない。​
日常的な身体活動では著しい疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じない。
NYHA II:軽度の身体活動の制限がある。安静時には無症状。​
日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
 
NYHA III:高度な身体活動の制限がある。安静時には無症状。​
日常的な身体活動以下の労作で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる。
 NYHA IIIs:身体活動に中程度制限のある場合
   NYHA IIIm:身体活動に高度制限のある場合
 
NYHA IV:心疾患のためいかなる身体活動も制限される。​心不全症状や狭心痛が安静時にも存在する。わずかな労作でこれらの症状は増悪する。
 
 
②Mets換算による評価という単位を用いた最大運動量の単位化
日常生活の運動量を、酸素消費量を基準にして、基準化したものです。
1Metsを、70㎏の男性が座って安静にしているときに必要とする酸素の摂取量と定義されています。
つまり、2Metsの労作とは座っているときに比べて2倍の酸素が必要な運動となります。
 
厚生労働省の身体活動のエクササイズ数表というのがありますので、一度参考にしてみてください。
結構、おもしろくて、歩行だけでも、普通歩行(平地、67m/分、幼い子ども・犬を連れて)は3.0Metsで、歩行(平地、81m/分、通勤時)は3.3Mets。やや速歩(平地、やや速めに=94m/分程度)は3.8Metsで、速歩(平地、95~100m/分程度)は、4.0Metsとなります。
また、ゆっくりしたストローク 6.0Mets、背泳 7.0Mets、平泳ぎ 10.0Mets、バタフライ・クロール 11.0Metsとなるようです。